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3月23日(火)新宿消防署と歌舞伎町商店街振興組合など関係4団体が「歌舞伎町の防火安全に関する協定」を締結 [まちづくり]

歌舞伎町の事業者に対する防火安全意識向上策の推進として、新宿消防署と歌舞伎町商店街振興組合、歌舞伎町二丁目町会及び新宿消防団の4者は、消防と地域コミュニティとの連携を強化するための『歌舞伎町の防火安全に関する協定』を締結した。

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「歌舞伎町の防火安全に関する協定」の締結式は、3月23日(火)、新宿消防署にて行われた。協定締結者は歌舞伎町商店街振興組合(片桐基次理事長、前列左から2番目)、歌舞伎町二丁目町会(井上一会長、前列左端)、新宿消防団(諏訪正一団長、前列右から2番目)、新宿消防署(野原英司署長、右端)、立会者として東京消防庁第四方面本部(北村芳嗣本部長、後列右から2番目)、新宿区区長室特命プロジェクト推進課(平井光雄課長、後列左端)、歌舞伎町タウン・マネージメント(新村雅彦代表、後列左から2番目)、新宿消防団第1分団(岩田千明分団長、後列右端)。

歌舞伎町における防火安全上の現状(課題)

  • 火災件数の推移:ここ数年、歌舞伎町の火災件数は、年間20件前後で推移しており(平成21年は17件)、この中には大きな火災に発展し得るものも潜んでいる。
  • 放火火災の可能性:歌舞伎町に約600ある建物の約7割が避難階段1系統で、一つが使用できない場合、代わりとなる避難階段を持っていない。
  • テナントの問題①:防火防災意識が低く、防火管理上の違反(防火管理者未選任、消防計画未作成など)を有するものが多い。
  • テナントの問題②:テナントの入れ替わりが激しく、消防機関も実態の把握が困難。長期的視野に立った防火安全意識も醸成されにくい。

こういったことから「明星56ビル火災と同様の大災害が発生する懸念が依然として残っている。」、この現状を打破するために消防署では平成20年度より「防火安全対策係」を新設し、精鋭部隊により、事業所への立入検査を充実させている。また、火災予防運動期間などの機会を捉え、消防署と区、消防団、歌舞伎町商店街振興組合、2丁目町会が連携して火災予防を啓発している。しかし、それでもなお、なかなか防火安全意識、風土は醸成されず、コンプライアンスが守られていない事業者も少なくない。

そこで、「消防と地域コミュニティとの連携をさらに強化し、歌舞伎町地域の事業者の防火安全意識を変えていく『場』を設けたい。」として、歌舞伎町地域における「防火安全ルール」を、地域と一体となり醸成していくために、今回の「歌舞伎町の防火安全に関する協定」の締結となった。消防署、消防団、歌舞伎町商店街振興組合、歌舞伎町2丁目町会が、平時における緩やかな協定を結び、歌舞伎町の安全・安心について一翼を担う新宿区や歌舞伎町タウンマネジメント(TMO)と密接に連携・協議・協力することにより、

  • 防火安全に関する講習会や、関係者間の情報共有会
  • 防火安全意識や相互扶助意識を醸成させるイベント
  • 防火安全に必要な技術向上のための訓練

の開催を、これまで以上に円滑に、機動的に実施していくための態勢をつくる。なお、「協定の当事者については、上記イベント等の開催にあたって参加団体、事業者等へ参加呼びかけなどを強力していただくことを想定しており、協定に伴う新たな事務負担増は最小限にとどまるものと考えている。」と新宿消防署。

平元予防担当課長より経緯と概要について説明、「歌舞伎町はこれまで、映画や演芸、最近では風俗などの文化、娯楽の発信地として、常に時代の最先端を走り続けてきたところであります。一方、歌舞伎町には、比較的小規模な雑居ビルが密集し、その多くが、避難のための階段を一つしかもたない、双方向の避難ができないビルであるという特徴があります。また歌舞伎町では、常に新しい業態の店舗、飲食店等のテナントが、これらの雑居ビルに頻繁に入れ替わり、その中には、私ども消防署に必要な届け出を出さずに営業しているところや、防火上不適切な改装工事を行ったところなども、残念ながら多々見受けられるわけでございます。こういった中、8年前、44名の方が亡くなった明星56ビル火災が発生しました。以後、同様の惨事を繰り返すまいと、我々消防も全力で安全に取り組んでまいりましたが、さらにこれを一歩進めまして、歌舞伎町の『街』と『消防』がともに連携し、テナントだけでなく、ビルオーナー、ビル管理会社など、街を構成する様々な方の目を、防火安全のほうにむけてもらい、地域全体の意識を底上げする、そして、安全・安心をつくりあげていくための取組みをしようじゃないか、ということになりました。
こういう経緯で、歌舞伎町1丁目地区の事業所、商店を取りまとめておられる、歌舞伎町商店街振興組合、2丁目地区を取りまとめておられる歌舞伎町二丁目町会、および地域と密着して安全・安心のため日夜取り組んでいる新宿消防団と、私たち新宿消防署の4者がともに手を結び、今回、地域密着で、防火防災意識を向上させ、災害時相互扶助意識を醸成させるための、平時の協定を調印、締結する運びとなりました。
ちなみに、歌舞伎町地域で、地域と消防が、防火のための協定を締結するのははじめてでありますが、消防が、災害発生時のための協定ではなく、平時のためだけの協定を締結することも、あまり例がないかと思われます。また、歌舞伎町地域の安全・安心につきましては、地元新宿区、および歌舞伎町地区活性化のため、数々の事業を展開されている歌舞伎町タウンマネジメント、これまでも消防と連携し、一緒にやってまいりましたこの二方にも協定の内容を説明いたしまして、今後とも、これまで以上に強い連携の下、誰もが安心して楽しめる街・歌舞伎町の実現に取り組んでいくことを確認したところです。」

 「歌舞伎町の防火安全に関する協定書」

歌舞伎町商店街振興組合(以下「甲」という。)、歌舞伎町二丁目町会(以下「乙」という。)、新宿消防団(以下「丙」という。)及び新宿消防署(以下「丁」という。)は、歌舞伎町地域における火災の予防と災害による被害の軽減に関する平素の活動(以下「防火安全活動」という。)について、次の通り協定を締結する。

(目的)
第1条 この協定は、次条の基本理念を実現するため、消防機関並びに地元の事業者及び住民が組織する団体が協力し、防火安全活動を推進するために必要な事項を定めることを目的とする。

(基本理念)
第2条 歌舞伎町地域における防火安全対策は、歌舞伎町ルネッサンス推進協議会が推進する「誰もが安心して楽しめるまち」の精神を受け、同地域における防火対象物関係者(以下「関係者」という。)の防火防災意識を向上させるとともに、災害時相互扶助意識を醸成させることを基本理念として行うものとする。

(対象とする地域)
第3条 この協定が対象とする歌舞伎町地域とは、次に掲げる地域とする。
(1)東京都新宿区歌舞伎町一丁目(四谷消防署が管轄する1番の一部を除く。)
(2)東京都新宿区歌舞伎町二丁目

(防火安全活動)
第4条 この協定における「防火安全活動」とは、関係者を対象に行う次の活動とする。
(1)火災の予防、災害における被害の軽減に関する講習や関係者間の情報共有のための連絡会の開催
(2)防火防災意識や災害時相互扶助意識を醸成、向上するための行事の開催
(3)防火防災のため必要な技術を向上させるための訓練の開催

(連携)
第5条 甲、乙、丙及び丁は、歌舞伎町地域における防火安全対策の推進に関し、新宿区及び歌舞伎町タウン・マネージメントとの緊密な連携に努める。

(丙及び丁の責務)
第6条 丙及び丁は、こう及び乙と連携して、歌舞伎町地域における防火安全活動を積極的に実施するものとする。
  2 丙及び丁は、歌舞伎町地域で防火安全活動を行おうとするときは、甲及び乙並びに新宿区及び歌舞伎町タウン・マネージメントに対し、事前にその内容を連絡するとともに、必要に応じ協力を依頼するものとする。

(甲の責務)
第7条 甲は、乙と連携して、丙及び丁が行う防火安全活動が円滑に実施できるよう協力する。

(乙の責務)
第8条 乙は、甲と連携して、丙及び丁が行う防火安全活動が円滑に実施できるよう協力する。

(防火安全活動の実施要請)
第9条 甲または乙は、必要と認めるときは、丙及び丁に対し防火安全活動の実施を要請するものとする。

(協定期間)
第10条 この協定の有効期間は、平成23年3月31日までとする。ただし、期間満了の1か月前までに甲、乙、丙及び丁のいずれかから協定解消の申し出がない限り、有効期限を一年間延長するものとし、以降もまた同様とする。

(その他)
第11条 この協定は、丙及び丁の実施する防火安全活動に、協定を締結していない第三者が参加することを妨げるものではない。
  2 この協定に定める事項を変更しようとするとき、この協定に定めのない事項で定めをする必要が生じたとき、この協定に基づく協力に当たり費用が発生するとき又はこの協定の事項に疑義が生じたときは、甲、乙、丙及び丁が協議して定めるものとする。

この協定の証として、この協定書を4通作成して、当事者署名押印のうえ、各自その一通を保有する。

平成22年3月23日

甲 歌舞伎町商店街振興組合 理事長 片桐基次
乙 歌舞伎町二丁目町会 会長  井上 一
丙 新宿消防団 団長  諏訪正一
丁 新宿消防署 署長  野原英司

立会者

東京消防庁第四方面本部 北村芳嗣本部長
新宿区区長室特命プロジェクト推進課 平井光雄課長
歌舞伎町タウン・マネージメント 新村雅彦代表
新宿消防団第1分団 岩田千明分団長

DSC_5698.JPG野原英司新宿消防署長「この協定に至りましたのは、私が、昨年の10月29日に、新宿区の、歌舞伎町ルネッサンス推進協議会というのがございまして、その席上、歌舞伎町の『街』全体で、防火の関するコンプライアンスをきちっと意識していきたい、そのための風土を作っていく、さらにはそのための仕組みを作っていきたい、こういう提案を申しあげ、本日このように協定に至ったところでございます。こうしてスクラムを組んで、より一層、今日より、歌舞伎町の安全に取り組んでいきたい。」(昨年の10月29日開催の第6回歌舞伎町ルネッサンス推進協議会の議事、野原新宿消防署長の発言参照)

DSC_5700.JPG片桐基次氏(歌舞伎町商店街振興組合理事長)「我々歌舞伎町商店街振興組合は、今、安全で秩序ある歌舞伎町、これは、歓楽街ということで、1丁目2丁目すべてのお店さんをひきこみ、ホントの楽しい、明るい、そして安全であるということで、遊びに来ていただいているお客様に、そういう形でやらしていただこうという中で、この締結書に関しては、本当に我々『街』の人間は大変喜んでおります。これからもより一層、我々街の人間、頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします。」

ほか、北村芳嗣東京消防庁第四消防本部長の挨拶は「歌舞伎町と言いますと、やはり日本の、世界に向けての観光案内の1ページ目にのってくるのが歌舞伎町、2ページ目が浅草の浅草寺と言われているくらいですね、世界中の誰もが知っている地域となっております。しかし、安全というのが、それを一番大きな支えになっているのではないかと思っております。昔、ニューヨークでは、broken windows、割れた窓ガラス理論といって、窓ガラスが割れているとニューヨークが嫌われるということで、非常にニューヨーク市はご努力をされた経緯がございます。やはり、そういった中で、平成13年9月1日にありました56ビルの雑居ビル火災、これを契機にしまして、色んな取組みがなされています。その取組みの一環として、その延長線上として、地域全体の安全、そして防火、ここに作りだしていこう、ここにいらっしゃる方ばかりではなく、そこに勤められている方、事業主の方、いろんな方が、ここを訪れる人たちに安全を提供していく、我々も、東京消防庁を挙げて、この新宿・歌舞伎町地域の協定にも協力してまいりたいと思っております。」

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▲協定締結後、新宿消防署1Fロビーに掲げられている歌舞伎町ビル火災のモニュメント前で協定締結者、立会者全員で写真撮影。

記念モニュメント~あの惨事を忘れないために

平成13年9月1日未明、新宿区歌舞伎町の小規模雑居ビルから火災が発生し、44名の尊い生命が犠牲となりました。この火災から事業所における防火管理体制のあり方や火災予防への意識啓発、法令遵守への取組みなど多くの教訓が得られました。
東京消防庁では、これらを踏まえ歌舞伎町における防火安全対策を協力に推進するため、平成18年6月22日新宿消防署大久保出張所内に「新宿歌舞伎町防火安全対策本部」を設置しました。
その後、平成20年4月1日、これまでの対策本部機能を更に充実するため、新宿消防署良防火に「防火安全対策係」が設置され、「対策本部」はその役割を終えました。
このモニュメントは、「新宿歌舞伎町防火安全対策本部」に掲げられた看板であり、これをモニュメント化し、大惨事となったあの雑居ビル火災から得られた多くの教訓等を風化させることなく、消防職員はもとより広く都民に対し火災予防のメッセージとして発信していくものです。

平成21年9月1日

※2001年9月1日の歌舞伎町ビル火災に関する記事:歌舞伎町が忘れてはならない記憶-44名の尊い命を犠牲にした歌舞伎町ビル火災、あれから8年


野原新宿消防署長は、今月で引退されるのだが、昨年の歌舞伎町ルネッサンス推進協議会以来、この「歌舞伎町の防火安全に関する協定」の締結が念願でもあった。課題はまだまだ多い。不景気とコマ劇場閉館以降計画が頓挫していることから、歌舞伎町内のビルなどの不動産の流動化も進んでいる。一方で、600棟という中小雑居ビル群を抱えるこの街で、実際のところ、歌舞伎町商店街振興組合や二丁目町会が把握可能な割合は半分にも届かない。これは、町会を含む旧市民のコミュニティの疲弊と、新市民との連携が出来てない点などによるもので、さらに物件の流動性も高まり、より一層把握が困難な状態になっている。

歌舞伎町商店街振興組合では、平成22年度の活動として、この町会活動の再活性化を目指し、構造の再編やその他いくつかの関連事業に着手する計画がある。地域内のコミュニティの基盤が機能低下しているという現実を再認識し、であるならばという立ち位置から、こうした活動を踏まえ、消防、行政が商店街と連動することによって「協定」の中身の有効性が増す。そのあたり、『具体的』にどう連携するべきなのかを議論していったほうがよいかと思う。残念ながらではあるが、地域経済が低下してくると、一方で商店街振興組合自身の求心力は増すもので、という観点から言えば、『安全』という側面から見ればやりようは大いにある。個人的には、地域の可視化が進み、匿名性が失われることで、なんだか街がつまらなくなっていくこともあるよというのをちょっとは念頭に。


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