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民主党・海江田万里氏に聞く-選挙の結果の向こうに何が見えるのか。【8.30総選挙東京1区立候補予定者インタビュー第一弾】 [インタビュー]

7月21日の麻生首相による衆議院解散を受け、第45回衆議院議員選挙は8月18日(火)公示、30日(日)投票日という日程で実施される。7月27日には民主党(鳩山由紀夫代表)が「政権交代。国民の生活が第一。」と題した民主党の政権政策マニフェスト2009(PDF版)として、自由民主党(麻生太郎総裁)は7月31日に「日本を守る、責任力。」のタイトルでマニフェスト要約版(PDF版)政策BANK(PDF版)がそれぞれ公開された。

小選挙区比例代表並立制が導入された1996年の総選挙(第41回衆議院議員選挙)以降、東京都第1区(新宿区・千代田区・港区)はまさに日本の首都機能および東京都庁なども含むこの国の政治的中心選挙区。過去4度の選挙で自民党・民主党それぞれ二勝二敗、2000年の総選挙では2500票差、2003年は1500票差と自由民主党からは与謝野馨氏、民主党からは海江田万里氏との間で激しい選挙が繰り広げられてきた。

前回2005年の総選挙では小泉内閣の郵政民営化を争点に刺客選挙が話題となり、自民党が圧勝、東京都第一区でも与謝野馨氏が5万票近い大差で勝っているが、いずれにせよ東京都第一区からの当選者はそれぞれ常に政府での重いポジションに就くことも想定され動向が注目される。そこで、第45回衆議院議員選挙を控え、この東京都第1区からの立候補予定者である自由民主党与謝野馨氏、民主党の海江田万里氏にそれぞれインタビューを申し込んだ。※東京1区(新宿区・港区・千代田区)立候補予定者、自由民主党・与謝野馨氏インタビューはこちらへ→自民党・与謝野馨氏(財務大臣・金融担当大臣)に聞く-選挙の結果の向こうに何が見えるのか。【8.30総選挙東京1区立候補予定者インタビュー第二弾】

今回は、取材申し込み後すぐに返答をいただき応じていただいた民主党の海江田万里氏のインタビューを掲載する。

DSC01724.JPG海江田万里氏

◇プロフィール:1949年、東京生まれ。慶應義塾大学卒業、参議院議員秘書を経て、経済評論家として新聞、TV、雑誌で活躍。1993年衆議院議員選挙(東京1区)に日本新党から立候補、当選。日本新党解党にともない、新党・市民リーグを結成、代表になる。1996年鳩山由紀夫氏、菅直人氏らと民主党結成。同年の衆議院議員選挙で再選。党の常任幹事、国際交流委員長などを歴任。国会では予算委員会、決算委員会、大蔵委員会に所属。2000年 衆議院議員選挙で三選を果たす。党の東京都連会長に就任。国会では国家基本政策委員会、予算委員会、財務金融委員会に所属。2002年党政策調査会長、第四次鳩山ネクストキャビネット(次の内閣)官房長官。2003年衆議院議員選挙で激戦を制し、四選を果たす。国家基本政策委員会理事、予算委員会委員。2004年岡田克也代表による新体制のもと、ネクストキャビネット(次の内閣)厚生労働大臣に就任、民主党の年金改革案づくりに尽力。岡田代表の再選に伴い、ネクストキャビネット(次の内閣)経済産業大臣に就任。2005年衆議院議員選挙で惜敗。◆ 趣味: 絵画鑑賞、映画鑑賞、読書、漢詩◆ スポーツ: 野球、剣道(二段)◆血液型:AB型◆ 座右の銘:人生意気ニ感ズ(海江田万里Websiteより)

◇インタビュー

  • 寺谷:~海江田万里HPより~時代の空気が変わる~『かつてイギリスで「英国病」が蔓延したときに、国民は政権交代を選び、保守党のサッチャー政権が誕生しました。その政治が行き詰まると、今度は労働党のトニー・ブレア氏に交代です。こうして政権党が変わることによって時代の空気を一変させてきた歴史があります。「日本病」とでも表現すべき現在の日本の経済・社会の状況を変えるのに政権交代が必要なときです。』 ・・・海江田さんのHPを拝見し、そこに日本は今や「日本病」だと、つまりこの国は病んでいると書かれてますよね。

海江田氏:「病んでいるというのは、一つは、若い人たちでさぁ、ホントに職が無いわな。ホントに可哀そう。しかも職があっても、それが派遣であったり契約であったりと。若い人たちに職が無いということはね、例えば年金の制度だってほとんど入ってないよね。それはやっぱり、日本の社会の根本が崩れていくことになるから、はっきり言って、お年寄りの福祉ももちろん大切だけれども、これから先のことを考えたときに、若い人たちがまさに非常に不安定になり、浮遊しているというか、まさに根が無くなっちゃっている。社会との結びつきが無くなっちゃっている。だから浮遊、浮かんでいることだけれど、これはやっぱり僕は大変なことで、日本のメルトダウンというか、これからの社会がどんどん中心部から溶け出していくということにつながっていくんじゃないかな。イギリスもかつては若者の失業率が高くて、日本ではまだ失業率は5%台だけど、あれは失業の定義がイギリスと日本では全然違っていて、自分で働く上で職安に行って求職票を出してさ、でやんないとカウントされないんだけれども、そうではない人が大量にいるわけですよ。最初っからあきらめて。
日本が病んでいる一番の理由というのは、若い人たちがそういう意味では根なし草なっているということ。社会だとか家庭だとか会社だとか、そういうものと全く切り離れて漂っている、漂流してると、そういうのが一番の問題だなと思ってます。」

  • 寺谷:雇用の問題というのは、やっぱり今は大きいということですね?

海江田氏:「非常に大きい。だから、僕はなにも全部が全部昔みたいに終身雇用でいいとは思わない。それはやっぱり雇用の多様化というのはあってもいいと思う。いろんな働き方ね。選べる。だけど、それはたくさん仕事があってその中で選べることと、今みたいに全部門戸を閉ざされて。正社員だとかなんだとか、自分の働きたい場所の門戸が閉ざされてしまって、ああいう、日雇い派遣なんて言葉もあるくらいにさ、そういう働き方をしているというのは、これは雇用の問題からすると大変大きな問題で、若い人たちの中で、ま、これは若い人に限らないけれど、雇用っていうのはやっぱりね、『働く』を『他(はた)楽(らく)』、自分以外の他、周りを楽にするという言い方もあるけど、人間て言うのは働くことを通じて自己実現が出来るんだよ。あなただってだろ?みんなそうなんだよ。だから、(仕事を持てないことは)自己喪失につながるからね。だからこれらの問題は何としても、全部が全部正規社員じゃなくて契約社員もあってもいいけど、今のようなあり方というのは異常なあり方で、一番望ましい社会というのは、職業選択の自由じゃないけれども、働くところはたくさんあるけれども、自分は正社員になるよ、自分は期間で行きます、自分は派遣で行きます、そういうような選択肢がたくさんあって、その中で選んでいくのが一番いい。だけど、今はそうじゃないから。だから、僕は(働きたい人に)選択肢があるような形にしていきたい。」

  • 寺谷:非正規雇用の問題がこの国で深刻な状況になってよく取り上げられてますけれども、いわゆる非正規雇用の方たちの権利を拡大していきましょうというどちらかというとそういう話になっているようですが、僕が思うのは、プロセスとしてなんですが、結果は同じものを求めるんですが、僕は、いわゆる正規雇用、正社員の権利を縮小、あるいは制限していく方が近道なんではないか?という気がしている。非正規雇用者の権利を拡大していくことは、経済活動へどうしても負荷がかかる。今はむしろ、正規雇用者、つまり社員、既得権利者側の権利を縮小することで非正規雇用者の状況に近づけるほうが現実的ではないかということです。この国の問題でもあろう、正社員は首が切れない、その最たるものとして公務員も首が切れない、これを改革されるおつもりならば、まず、その元凶になるのが、公務員制度にあるのではないか。要は首が切れないという話です。公務員であれ正社員であれ、首が切れない、その問題を考えると、じゃ、もう少しラクに首も切れると、そういう段階から目指した方が無駄を省く意味でも現実的なのではないか?

海江田氏:「それは、傾聴に値する指摘であって、僕は、公務員も、今は首が切れない、もっと解雇できるシステムにした方がいい、直した方がいいと思う。その変わり、雇用保険に入って下さい。だから、別の言い方をすると、公務員を雇用保険に入れるということ。そうするとけっこう財源が豊かになるし、だからそこから入っていく、入り口としてね。それは前から考えていたんだ。公務員も雇用保険に入って下さい、ってことはその裏っかえしをすれば、公務員も首を切られる可能性がありますよってこと。それは、僕もまったく賛成です。」

民主党マニフェストより~■公務員制度の抜本改革の実施

【政策目的】
○公務員に対する信頼を回復する。
○行政コストを適正化する。
○労働者としての公務員の権利を認め、優秀な人材を確保する。
【具体策】
○ 2008 年に成立した「国家公務員制度改革基本法」に基づき、内閣の一元管理による新たな幹部職制度や能力・実績に応じた処遇などを着実に実施する。
○定年まで働ける環境をつくり、国家公務員の天下りのあっせんは全面的に禁止する。
○地方分権推進に伴う地方移管、国家公務員の手当・退職金などの水準、定員の見直しなどにより、国家公務員の総人件費を2割削減する。
○公務員の労働基本権を回復し、民間と同様、労使交渉によって給与を決定する仕組みを作る。

  • 寺谷:今回、民主党のマニフェストの中にも、ひょっとしてそれを意図されてるのかなと思ったのが、公務員の労働基本権を認めるというのがありましたね。

海江田氏「あれは違う。」

  • 寺谷:そういう意図ではない?

海江田氏:「だけど、次のステップとしては、そういう考え方、僕みたいな考え方も出てくる。あれ(公務員の労働基本権)は、まずスト権、団体交渉権、団結権、この三つ、まず民間組合と同じように組合本来の権利が認められる、それはまず一つのセーフティネットだよ。このセーフティネットを作ったうえで、その次のステップとして出てくるのが、今の僕の言った考え方であって、その結果として出てくるのが公務員も首を切られることがあるよ、という話だよな。そういう段取り、今民主党が(マニフェストに)書いているのは第一ステップのところだけどね。将来的には、民主党の一員だからさ、そういう考え方もあると、これははっきり伝えといて。」

  • 寺谷:あと、もう一方で、これも関連付けられると思いますが、天下りの問題があります。正直、今の政治、自民も民主も公務員をたたきすぎじゃないか?官僚は政治にとっては優秀なパートナーであって、天下りをする官僚はすべて悪者、ととらえたアナウンスが多いが本当はそうじゃないのではないか?確かに一部の天下り構造は無駄な歳出を生んでいる元凶にもなるが、一方で「官民の人材交流」と捉えた場合、むしろあってもいいもののように思える。国家公務員の天下りの斡旋を全廃しますということを書いていますが、これも僕は逆じゃないか?と思うのが、いや、天下りはあってもいいんじゃないか?という、ただし、官民の人材交流でなければいけないというのかな。例えば、アメリカの例ですけれども、政権が変わるごとに幹部職員が変わるじゃないですか?幹部職員は確かにクビになるんですけれども、民間のシンクタンクなんかに行ったりする。そして、政権がまた変わると政府職員に戻ったりするじゃないですか。あの行ったり来たりがわりとシステム化されているんですか?

海江田氏:「アメリカのは、『回転ドア』って言うんだよ、呼び名で。ぐるぐる回って、『官』に行って、『民』に行って、『学』もある。官・産・学、この間を行ったり来たりする。これを『回転ドア』って言うんだよ。日本は、まさに『天下り』、天孫降臨じゃないけどさ、上から下りてきたという話で、方向が一方的。ごく稀に天上がりもあるけれど、本当に極々稀なケースであって、天下りの問題っていうのは、今の公務員制度で、いわゆるキャリアとノンキャリアというのが厳格に分かれている。天下りがある、それからあと、一人が生き延びて、女王蜂みたいな世界でね、他は全部途中でやめて行く。これはキャリアの世界の話なんだよ。で、ノンキャリアの人たちは定年まで勤めている。
僕は、まず、キャリア制度を廃止すべきという風に思っていて、その上で定年まで働きたい人はちゃんと働かせましょうと、ね。
だから、一人が次官になったって、同期や先輩が役所の中に残っていたって全然構わないじゃない。今の公務員制度を改革した上で天下りを全面禁止する。で、今あなたが言った『回転ドア』というのは、これは自由ですよ。どうぞ自由にやってください、その形を後押しするような、まぁ、官民交流センターがあってもいいかもしれないけれど、今の官民交流センターはそうじゃないからね。本来の意味での回転ドアの斡旋をする機関があるのは、それは構わないと思うけれど、だけど、原則、自分の力でやって下さい、それは自分の力でやる話だから。今のは、ホントに役所が全部やるんだからね。」

  • 寺谷:ということは、自力でやることについては妨げないが、斡旋はしないということですね。

海江田氏:「もちろんその通り。しかも、その斡旋が、役所の力を背景にしてたり、役所の税金の使い道を背景にした、天下りした先に随意契約を結んで、高い契約、高い値段で買い取らせるとか、そういうのがあるわけだから。それは全廃するんだから。」

  • 寺谷:それは、ただ単に天下りを無くすということだけでなく、その先のこともあるということですね。

海江田氏:「それはもちろんね、官の中にも優秀な人はたくさんいるわけだから、その人たちの力を民間で活用するということは大切なことだからさ。それに、最初に20いくつか(の年齢)で決めたことをそのまま(一生)続けて行くなんていうのは可笑しな話であってさ。だからアメリカみたいに自由に回転ドアになればいいんだよ。自分の力でやって下さいっていう。公務員制度の改革というのは、今言ったようにキャリア・ノンキャリアを分けるのをやめて、で、やりたい人は最後まで定年退職までやって下さい。定年退職も世の中と同じように62くらいまでのばしゃいいじゃないかと。」

  • 寺谷:それが、社会全体の民間の雇用のあり方にも繋がっていきますね。

海江田氏:「そうそう。」

  • 寺谷:雇用というものは、一つに、内需を支えているものですから、やっぱり今この国は内需をなんとかしなくてはいけない。

海江田氏:「それが大事なポイントで、ここが自民党と民主党の一番の違いなんだよ。自民党の一番極端だったのが、小泉・竹中の括弧つきの『改革路線』で、彼らはやっぱり内需に頼らなかったんだよ。内需に切り替えしようとしなかった。だから、外でもって、貿易やって、あるいは現地で作ったものを売ってという話になると、必ず国際競争力っていうのがキーワードになるわけだ。で、国際競争力を強めようと思ったらまずどうするかと言ったら、雇用を犠牲にするんだよ。あるいは雇用は、正社員は雇っていても給料を犠牲にする、いわゆる彼らの言う固定費のところを圧縮することによって競争力をつける。だから一連の流れなんだよ。ここを根っこから切り替えをやる、自民党はまだ、その切り替えが出来ていない。今度だって、確かにアメリカが景気が悪くなって、中国だとかインドだとか、また相変わらず外需に頼った景気回復を考えているけれど、それじゃだめなんだ、はっきり言って。内需にしなきゃいけない。で、内需に一番大切なのが雇用、雇用と賃金、これが第一。二番目に大切なのが社会保障の制度。
今の日本は個人の金融資産が1400兆ある。その個人の金融資産が全然回らないんだよ。氷漬けになっちゃうんだよ。昔、笑い話だけどさ、金さん銀さんが元気だったころ、テレビ局に行って放送者賃もらって、謝礼もらってさ、このお金どうしますか?って言ったら、いや、老後のためにとっとくって。これは笑い話だよ、本物じゃないけど。だけど、事ほど左様に、不安がいっぱいあるから、ホントは使ったっていい人たちなんだよ、あの人たちは。でも、そう人たちだって使わない。結局最終的には自分の人生さ。僕はお金で買えない幸せもあるけど、お金で買える幸せもある、年取ってっからね。僕だって海外に船で全部行きたいしさ、それから将来病院に入院してさ、一日何万円もする差額ベット代払って、これが二年三年続いたらどうしようって思ったら全然お金なんて使えないもんな。その人にとっては不幸なことでしょう。だから、そういう社会保障の制度を最低限整えるということ。雇用と社会保障制度、これが内需拡大の切り札です。」

  • 寺谷:僕は、ビジネスチャンスも作らないといけないんじゃないかと思ってます。どうしても優先順位が既得権に行きやすいからこそ、少し社会的な変化を起こすようなきっかけになるものをつくる、よく自分は投資誘導が重要という話をするんですが、投資というのは必ず成功者と失敗者をつくる、当然両方いるわけですが、失敗者をつくることを恐れないことも大事だったりするじゃないですか、現実に。

海江田氏:「セーフティネットって言葉があるでしょ。あの、セーフティネットっていうのは、まさに、サーカスの安全俸なわけだ。サーカスがあれだけ大胆な、シルクドソレイユにせよ、ラスベガスなんかでやっているショーなんかでもさ、あれだけ大胆なお客を魅了する演技が出来るのは、ちゃんとセーフティネットがあるからなんだよ。だから、僕はセーフティネットというのは、単に弱い人、貧しい人を救うということじゃなくて、むしろ、競争やってください、もっと自由にお客を魅了するような演技をやってくださいと。それがまさにビジネスチャンスだと思うんだよ。そこに(セーフティネットが)あるから自由闊達な演技が出来るんだよ。今の日本はさ、失敗したら、それこそ一年間に三万人も自殺しているわけだからさ、こんな社会じゃホントの意味での、さっき言った競争力、国際競争力ね、とは違う意味での、本当の意味での競争とか、新しいイノベーションだとか、新しい技術の革新だとか、そういうことが出来ないと思うよ、この社会では。かえってないことによって。」

  • 寺谷:内需の拡大や社会慣習の変化の一環として、前回都議選のときに民主党にお願いしたのがいわゆる公共交通機関の24時間化を実現できないか?という話だったんです。

海江田氏:「なるほど、わかった。じゃ、僕は公共交通機関で、これは前からの持論だけれど、これは直接国の政治ではないんだけれど、プラムってあるでしょ?」

  • 寺谷:プラムとは?

海江田氏:「東京で言うと都電、あれを復活しようと。これが僕の前からの持論。それで、そういう国会議員の会合もあってさ。」

  • 寺谷:それって今でいう都営地下鉄のことでは?

海江田氏:「地下鉄じゃだめだよ。路面電車だよ。地下鉄は下へもぐっちゃうからさ、あれだと乗って何やっているかっていうと、本読んでいるか、メールやっているか、本を読んでいるか。ダメダメ。しかも年よりはあんな深いところ行ったり上がったり、高齢化社会なんだから。
ヨーロッパにはみんなあるじゃない、路面電車が。その変わり、車は途中まで行って、中には車は入れない。」

  • 寺谷:トランジット・モールですね。

海江田氏:「そうそう。で、都電を一回復活させて、そうするとそれに乗っているといろんな街の風景が見えるんだよ。面白そうな店が出来たからちょっと下りてみようかとかさ。そういうことが出来るわけ。一日乗り放題見たいな切符もってさ。そういうのが絶対必要で、で、地下鉄はむしろ物流に使えばいいと思う。」

  • 寺谷:地下鉄を物流に、そうですね、それはありますね。

海江田氏:「だから、そういう意味での交通機関のもう一回の再配置というか、高齢化社会なんだから、高齢化社会にあったゆとりのある、環境に優しい公共交通機関、それも路面電車。今、富山だとか、いくつか復活しているけれど、日本の中心の東京に無いなんて絶対おかしい。歌舞伎町だって昔は路面電車の出発点だったんだから、僕はもう一回、歌舞伎町にね路面電車を。今でも泪橋のところにあるけどね。あれをもっともっと復活させたい。」

  • 寺谷:あ・・その、僕が言っているのは、山手線であれ地下鉄であれ、一時間に一本でもいいから夜走っていたほうがいいんじゃないか、ってことです。

海江田氏:「ああ、そりゃそうだね。」

  • 寺谷:ただ、そのために一つネックになるのが、せっかく国政ののであれですけど、前回民主党さんは都営地下鉄大江戸線の一時間に一本でもいいから走らせるくらいのことからだったら可能性はあるよ、という話が出ましたけど、僕は営団地下鉄(メトロ)のこともあると思うんですよね。営団地下鉄は国の話ですよね。国として見た場合に、営団地下鉄は国が資本を出しているということと、超優良企業であるということ、都営地下鉄は都が資本でありながら赤字、そこで両方とも株式会社であって、資本が異なる、成績が違いすぎる、となって合併が進まない。そのことによる無駄は大きい。交通インフラというのはネットワーク性あってこそ有効なもので営団地下鉄と都営地下鉄は合併すべきじゃないかと思うんですよね。ただ、それは都だけでは出来る話ではないから国の話として伺えたらなと。

海江田氏:「僕は、まだ24時間走らせるかどうかを考えたことはあまり無いけれども、限りなく24時間に近いようなやり方は、やろうと思えば出来るわけだ。朝は少し早くしてさ、高齢者も朝早いからさ。それから夜を遅くして限りなく近づけていけばいいんだけれど、公共交通機関の再編成というか、都電と地下とをどういうすみ分けにするかとか、それから今君が指摘した営団と都営をどうするかという話、もう一回再編成をある程度国が関与して、国のレベルで、でも国に集めるという話じゃなくって、方向性を出すと。そういうことは必要だと思うよ。」

  • 寺谷:それを進めていくということで、公共交通機関のネットワークの再構築というのはですね、例えばバスの話なんかも出てくるでしょうし、そもそも電力の消費の話にも関わってくるだろう。少し話題が離れますが、夜間電力のことってあると思うんですね。
    とくに深夜電力って今安いんですけれども、現実にこれって余っているからですよね。昼間の消費電力が高く、深夜の電力は余る、そこで発電を調整しなくてはいけなく、そこに環境負荷がかかっている。要は、それをどう馴らしていくかっていうなかで、たとえば深夜の電力の蓄電などが求められるとしたら、それはこれからの原子力行政にかかってくるんじゃないかと。
    政府はこれまで原子量区発電を40%まで増やそうということになっていますけれど、となればその昼間・深夜の発電における調整弁の幅は大きくなっていきますね。その場合、どのように考えて行けばいいのか、夜間電力の蓄電というものと、夜間電力の利用、これは環境負荷軽減のために必要なことなのではないか?

海江田氏:「なるほど。それはその通りだね。東京は24時間眠らない街にしようという言い方なのか、これはバブル経済のときにそうなったけど、だけど24時間眠らないと疲れちゃうんだよな。だけど、高齢者は夜早いけれど朝早いと。若者は夜遅いけど、朝は遅い。そういう多様な、東京なら東京の街が若者だけの街であるとか、地方がお年寄りだけの街であるとか、これがやっぱりおかしいんだよ。だからみんなが住めるような街にすると。その中から当然のことながら昼と夜のすみ分けみたいなのが出てくるんで、みんなが住みやすい街にしようとなれば当然昼と夜の入れ替えだってあるわけだから、それで結果的に一日中交通機関が動いているとか、店が開いているとか、そういう考え方だろうねこれは。」

  • 寺谷:そこで、東京1区、ということになるのですが、実はこれまでの言い方と少し矛盾するかもしれませんが、僕はそれでも東京の一極集中はよくないと思っている。今この街は昼間人口3000万、世界で最大だそうです。ある意味異常に肥大化した都市です。もちろん東京じゃないと飯が食えないからそうなっちゃうんでしょうけど、多分これはまずい。本来地方が元気でこそ東京も生きてくるんだろうなと。

海江田氏:「やっぱり地方分権なんだよ、はっきり言って。地方分権というとすぐ道州制っていうけど、僕らはあんまり道州制よりも、もうちょっと今、基礎的自治体と言ってもっと生活に身近なところを再編成していって、そっちに中心をおいていこうと言う考え方なんだけれど。
地方分権、たとえば海外にはいろんな例があるよ。ドイツなんかはそうだな、フランスはどちらかというと中央集権に近い。歴史的にみると、江戸時代の日本を連想してみればいいってよく言うんだよ。もちろん僕は生きていたわけじゃないけど、ものの本で読んで知った江戸時代だけれども、江戸時代というのはそれなりに300諸侯いてさ、それぞれ教育から何から警察から全部(地方)が握っていて、生活、産業までそうだよ。で、意外とうまくいってた時なんだよ。で、国防だとか、外交だとか、通貨の発行だとか、これは江戸幕府がもってたということで、もちろん今中央政府の役割というのは他にも増えてきているけれど、基本的には江戸時代みたいな幕藩体制みたいなのを想定してもいいんだよ。それが案外結構、今でも地場産業ってのはだいたいその時代に興ってきたでしょ。だからそういう形に大胆にさ、地方分権を進めると。
だから、そういう意味で言うとホントにすごい大きなまさに大きな革命であって、明治維新以来、まさに幕末以来だよな。もう一回ばらばらにするわけだからね。だけど、日本全体の国力なんていうことを考えて行くと、それもやってみることは大事かなと一回ね。」

  • 寺谷:地方分権で僕が感じるのは、法体系の問題もあるんじゃないかと。簡単に言うと、一つの法で一つの国を統治するのに限界が来ている感じがする。

海江田氏:「アメリカがそうなんだよね。まさに州法なんだよね。」

  • 寺谷:国の法律と地方の条例とどっちを上位にすべきか?現実として僕が歌舞伎町で関わっているところで、海江田さんもお詳しいと思いますが、風営法のことがあります。風営法は昭和33年の風俗営業取締法の時代から基本法体系はほとんど変わっていない。

海江田氏:「法体系で言うと、法律と条例の問題、それから実はさっき僕は分権って言ったけど、これは官僚制の問題でもあるんだよ。風営法はまさに、官僚で、全部中央官庁がこうあるべきだという形で、それでまぁ自分たちの権限を増やすためにさ、特に営業関係の、刑法は別だけど経済法なんかはずいぶん官僚が自分たちの権益を増やすために作ったものがたくさんあるんだよ。地方分権というんだったら、仰るように、法律から条例へと、だから条例をもっともっとね強化しなきゃいけない。条例の数を増やして、そして法律の数を減らしていく、これは当然実態的に似合うものとしてね。
風営法については、あなたも専門だろうけど、風俗だけじゃなくて、たとえばゲームセンターだって、あれは確か、高校生までの子供は親がいても夜9時以降ダメでしょ、あれは?あんなのおかしいんだよ。悪いけれども。このエリアは、新宿なんかはまさにそうなんだよ。このエリアはそれこそまさに条例でもって、遅くまで子供がいてもいいですよ、ただもちろんいろんな犯罪を犯しちゃいけないからそこのところはしっかり網をかけるけれど、だけど何時にいちゃいけないなんて、みんながみんな犯罪するわけじゃないんだから、夏休みだってあるわけだから。だけど、それを一律とか、まさに風営法のところにきちゃうわけだから、地域の考慮もしないでね。そういうのは、やっぱり中央の官僚の権限を落としてね。
それから、条例というのは、東京都の条例もそうだよ。これもまた、ほとんど都の役人が作ってるんだよ。これは東京都議会の民主党には僕は前から言っているんだよ、もっと条例を(議員自ら自分たちで)作れと。国はやっと、議員提案の法律というのが少しづつ出来てきたんだよ。東京都なんか全然ないからね。オレ一回調べたんだよ、石原さんのとき。わずか4件だよ、議員提案の条例が。そりゃダメだと。(都議会は)国から10年20年遅れているよと。そういう形で、生活実態に合った、地域にあった条例をつくっていくと、いうことは大切なことだよ。分権の、あんまり言われてないんだよこの点は。」

  • 寺谷:最近は特区というのを利用するケースもあるが、地方分権のあり方は、特区のようなあり方をもっと進化させたシステマチックなものにすればいいように思う。

海江田氏:「うん、それから特区というのは、それこそここだけは特別だよということだけれども、地域の自発性だとかなんだとかが、出てくることを今まで妨げてたからそこに穴を空けたと言う話だけど、一回全部日本全体に穴を開けないとダメだよ。要するに日本全国を特区にしたっていいわけだよ。ただ、自分たちで考えてくださいよと。上からの規制はもうやりませんよと。少なくしますよっていう方向でやっていかないといけない。特区の数が30が100になってもこれじゃダメなんだよね。日本中全国を特区にするぐらいのつもりで、これまでかけてた不要な法律の網を一回外すと、いうことは大切だよ。」

  • 寺谷:となると、かなり大胆な、地方の意志を生かしながらもしかし全体のバランスというか高度な設計を国全体でやらないといけないところもある。まさにこれがこれからの政府の役割なんでしょう。

海江田氏:「うん、そう。だから政府の役割っていうのは、自己否定の論理なんだよ。中央の政府でありながら、中央政府がいかに自分たちを、ここに集まってた権限を手放していくかっていう話なんだよね。それを、最近はやりの言葉で国の形って言うけど、その国の形というのは、実は、明治維新以来ずーっと作ってきたその国の中央集権、せっかく集めたわけだから、中央政府の役人だとか、それから政治家の中でもその中央政府の権限を強めることによって自分たちの力を強めようとする動きがあったけど、ここは一回大胆にそれを手放していくかな。東京都がそうなんで、僕はどちらかというと道州制よりもさっき言った基礎的自治体、だいたい300くらいにするのが一番いいと思っているけど、東京都が東京都自身の分権をやらなきゃいけない。これは全然出来ていないからね、悪いけど。」

  • 寺谷:そうは言っても、東京は他の地方の自治体に比較して頑張っているように見えるのだが?
海江田氏:「まぁ、そうだね、アピールする力はあるけれどもね。でも、今の石原さんだとか猪瀬君もそうなっちゃったけどさ、とにかく国とけんかして東京に持ってくるって話ばかりじゃない。違うんだよ、東京都ってのは最後僕は無くなったっていいと思う、極端な言い方だけども。
東京都議会議員なんてのは、仕事やんないんだったらさ、何も専業じゃなくてさ、ドイツなんかそうだけど、区議会議員や市議会議員が兼職で時々東京都議会議員としてもやる、だけど、給料もらうのは区議会議員、市議会議員の給料をもらいますよ、だけど後はボランティアで東京都議会というのをつくってそこで必要な条例なんかを議論しますよという形であってもいいと思うんだ。」
  • 寺谷:時間がなくなってきたので、後2点伺いたいことがあります。中国が、世界ウイグル会議のカーディル議長来日に関し、日本に抗議をしめしている。カーディル氏の発言「一万人のウィグル人が消えてしまった。」、それと、これは7月30日のニュースだが、米国で最も人気の高い科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」7月号が、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で中国当局が実施した40数回の核爆発実験の放射能により、数十万ものウイグル住民が死亡した可能性があるとする記事を掲載した。これについて、どう思いますか?

海江田氏:「僕はね、実は中国と関係が古いんだよ。今から30数年前、1975年、シルクロードへ行ったの。その時に、一人暑いときに歩いてたんだよ。そしたら、ウィグル族の青年がやってきてさ、あんたどこから来たのか?って、僕は中国語しゃべれるからさ。日本から来たと、じゃこれ持って行ってくれって、手に古い上着を持っているわけ。で、ここに自分たちがどういう風に中国政府にいじめられているか書いてあるから、これを持って行って発表してくれって言った。それで、う~ん・・どうしようかなって思ってたの。まぁ、すごい真剣そうだったからさ、よし分かった、持って行ってやるって言ったらさ、金くれって言うんだよ。それで、すっかり白けちゃってさ・・・。金じゃダメ、ただなら持って行ってやるけど。
そしたら、金くれって、これは自分の命もかかってて、危険にさらされるんだからその金だと。そりゃ悪いけどダメだと。そういう話ならダメだと、そういった話が今から35年前ね。どこだったか、ウルムチじゃないんだよ、カシガルとかなんとかその辺なんだよ、シルクロードの。そういう原体験みたいなのがあって、あの彼がどうのこうのじゃないんだけれども、ただ中国は緩やかな連邦制にしなきゃだめですよ。そういう長い目で見れば、中国政府も早くそういうことに気がつかなきゃいけないし、だから僕は胡 錦濤とも何度も会っているけれど、僕は彼らに、胡 錦濤には言わなかったけれど、中国の人にね。あそこは時差がないんだよ、中国って国は。あれだけ広くて、4時間ぐらい時差があるのに、全部北京時間でやるわけだ。これじゃ、人々の、人間の生理を無視して押しつけてんだよ。これじゃあダメですよって僕は言ったんだ。随分言ったんだ、で、残念ながらまだ聞きとげられていないけど。
だからそういうところから変えて行かないといけない。全般的に言うと、誰が来るとか来ないとか賛成だとか反対だとかそんなことはどうでもいいのだけど、そういうことはやっていかなければ僕は駄目だと思う。」

  • 寺谷:このウイグル民族の問題はしばらくデリケートな問題になりそうですね。

海江田氏:「そうだね、なるよね。だから、基本的にあそこは、広すぎるんだよ。あの国は。歴史も、漢の時代とか、今までの歴史で一番広くなったんだから、そりゃやっぱり無理があるんだよ。緩やかな連邦制にしなきゃダメだ。もたない、あんな大きな国は。」

  • 寺谷:最後に記者クラブ制度について、民主党の最大の役割の一つ、『政治を国民の手に取り戻す』こと。そのためには、いかに政治を、あるいは国家の運営を開かれたものにするのか?情報公開という意味でいうと、記者クラブ制度について民主党は今まで党に関してはフリーの記者にも解放してますよね。政府になった場合、記者クラブ制度改革を踏まえ、まずは官邸もそうされる、ということになるんでしょうか?

海江田氏:「やるつもりだよ。政治家の資質の問題もあるんだよ。なんだって隠したって無理なんだからさ、だからあなたが来るって言ったら時間をつくるでしょ。」

  • 期待してます。そういう情報公開、政治のガラス張り化をするのは民主党の役割だと思うので是非お願いします。

「わかりました!やるからね。」

  • 寺谷:よろしくお願いします。ありがとうございました。

※寺谷公一による海江田万里氏インタビューは7月31日、11時より四谷三丁目の「海江田万里を支える会」事務所にて行われた。インタビュー時間は約40分。インタビューの全文を掲載した。


民主党のマニフェストを見ると、いきなり「政権交代」とくる。政権選択が争点?そもそも総選挙は衆議院の優位性が規定されている以上、当然ながら政権選択選挙であり、争点?というのはおかしな気もする。が、しかし、長らく与野党の実力が開きすぎていたから、これまで国民には選択権が無かったと思えば、ようやく国民に政権選択権が生まれた、つまりそれを選挙で示しましょう!ということなのだろう。

インタビューに与えられた約束の時間は30分、実際には約40分近くにはなっていたが、それでも快く話をしていただいた海江田氏に感謝します。前半、雇用と公務員制度改革、内需拡大と地方分権の話が深く出来た分、もう少し聞きたかった外交や防衛、武器輸出三原則の見直し、それと治安対策や警察行政などについてそこまで話が及べなかったのは、自分のインタビュアーとしての未熟さです、あしからず。さらに、もう少し具体的に掘り下げたかった「記者クラブ制度改革」なのだが、これまで民主党が党の記者会見をフリーの記者らにも開放してきたことを踏まえ、政権を取った場合官邸から変えていくつもりであることをはっきりと意思表示してくれたことで良しとします。自分は決して記者クラブ制度そのものを否定しているわけではない。それもあっていい、しかし、記者クラブ内の記者しか会見に出れないのはいけないと思っている。現状でも、フリーのジャーナリストはクラブの記者と交流しながら互いに情報を補完しあうことが可能だし、だが、行政や警察記者クラブなどは、クラブ主催の記者会見の体裁でありながら事実上警察が記者を選別し情報を制限させることが横行している。その弊害として記者クラブは体制の広報となり下がり、行政や警察、政府に不利なニュースは報道されにくく、またフリーはよって反体制的な報道になりがちなことなどが起きてしまう。情報を開示し、国民に知る権利を保障し、正当なジャーナリズムを育むためにも、記者クラブ制度は改革されなければいけない。そこで、民主党が政権を取った場合、官邸からそれを実行しようとするならば、それは大きな変化の始まりになるだろう。

この選挙の結果の向こうにある日本の姿、それはどういう形を目指していくのか、こうしたインタビューを通じて何かを伝えられたら幸いです。なお、同じく8.30総選挙東京1区立候補予定者である自由民主党、与謝野馨氏(現財務大臣、国務大臣(金融担当))のインタビューは次回掲載を予定。

◇第45回衆議院議員選挙・東京都第1区特集記事(時系列順)


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