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Chim↑Pomによる2週間限定レストラン「にんげんレストラン」10月14日~28日まで [イベント]

現代アーティスト集団" Chim↑Pom"による2週間限定のレストラン「にんげんレストラン」が歌舞伎町2丁目、通称"歌舞伎町ブックセンタービル"にて開催中です。Chim↑Pomエリイの夫でもある手塚マキが会長を務めるSmappa! Groupが事務所および店舗として一棟借りしてきたこの、通称"歌舞伎町ブックセンタービル"が解体を前に行うものだ。かつてここら辺一帯を住吉会系組織が地上げをしてたものの、一部地権者が売却を拒み頓挫したブロックにある。しかし、その後、2016年のホテル松木における火災と、その際に女性宿泊者の死亡事故が起きた。そのあたりから土地が動き始め、ここを新宿ソフト、つまりロボットレストランの経営母体である森下グループが買い上げたという経緯が背景にある。その解体前、この建物ごと使って行われるアートイベント。会期は10月14日よりスタート、10月28日(日)までの2週間の開催。


会場:旧歌舞伎町ブックセンタービル3フロア
会期:2018/10/14~10/28
営業時間:PM2:00~PM9:00
主催:Smappa! Group、Chim↑Pom studio
内装:Chim↑Pom×西村健太
作品提供協力:ANOMALY
協力:無人島プロダクション、ANOMALY
http://chimpom.jp/ningen/

そもそもこの建物1階にあったカフェ&バー(日中は歌舞伎町ブックセンター、夜はJimushono1Kai)は道路側エントランスが大きく解放されたつくりでした。それに合わせ、Chim↑Pomは、またもやビルを屋上までくり抜いた。2016年に開催した旧歌舞伎町振興組合ビルの取り壊しに伴い開催された個展「また明日も観てくれるかな?」展を彷彿させるものだが、あの時は最上階を使用中だったためできなかった屋上までのくり抜き、屋根(3階の天井)、3階のフロア(2階の天井)、2階のフロア(1階の天井)に各一辺2m3m大の正方形の穴を開け、青空レストランとなる吹き抜けを作った。一階にはその穴を通して外光を取り入れ、昼は青空レストラン、夜は歌舞伎町のネオンの差し込みによる照明で飲むバーの体裁をベースにしている。

「にんげんレストラン」という以上、あくまでレストランなので、飲食がメイン。
Chim↑Pomが呼び集めた様々なパフォーマンスアーティストたちがそれぞれ自在にライブやパフォーマンスを行う中で、「Last meal(最後の食事)」を食すというもの。「Last meal(最後の食事)」とは、死刑囚が刑執行前に食べる「Last meal(最後の食事)」のことで、日本では公開されていないが、アメリカなど一般公開されている情報に基づき、実際に出されたメニューの提供を行っている。
パフォーマーとしては、関優花さんは、体重計に乗った作家が体重計に乗せられた巨大なチョコレートの塊と対峙して、自らの体重と一致するまで舐め溶かすとか、松田修さんは、最初裸で鎖につながれた状態から開始、そこから来場者からの"施し"を受けながらそれだけで会期中をどう生き抜けるかという試みとか、など、正直どう表現したらいいかわからない個性的なそれぞれが会期中そこかしこに存在している。

リリースにはこうあった。
"歌舞伎町の再開発の歴史は、戦後の焼け野原と闇市の整理からスタートしている。露店や人々がひしめき合い、独自のルールや再開発とともに街が形成され、性風俗や肉体、欲望といったフィジカルを、武器や消費として使うことで人々は様々にサバイブしてきた。歌舞伎町に関わらず、いまや都市はどこでも「テーマがセレクトされた公共」空間としてデザインされている。公園は民営化が進み、かつてそこにいたテキ屋などいかがわしい人々やホームレスたちは姿を消しつつある。「公共」の名の下に、しかしそこにいる人々は選抜されている。
「まずは人間が様々にいて、だから公共が必要なのか」それとも「公共がまずあって、そこに人々が必要とされるのか」。戦後から続く東京の都市論は、日本の社会論としても大きなタームに差し掛かっている。"


レストランで提供される「Last meal」は、これを最後の食事に選んだ死刑囚に想いを馳せつつ、やはり「にんげん」を食べるという感じだろうか。
例えば、ビクター・フェガーの最後の食事はオリーブの実一粒だった。1963年、28歳にして誘拐と殺人にて絞首刑となった。医者を誘拐し殺人を犯し、アイオワ州最後の死刑囚となった。スペシャルミールでは、オリーブの実ひとつを注文したが、死刑執行後、そのオリーブは彼の服のポケットから発見された。これを再現し、提供価格は200円だった。テレサ・ルイスの「Last meal」は、フライドチキン3本とグリーンピースのバター乗せ、アップルパイとドクターペッパー。保険金殺人、強盗などの罪で薬物注射による死刑。享年は41歳、知能指数が死刑のボーダーラインをわずかに上回るIQ72ということから物議を醸したという。提供価格は2,500円。

いつのまにか公に引き寄せられ、埋没する個の存在主張を再表現するのが「にんげんレストラン」の今回の取組みなのかなと思う。これらをどう感じ、どう評価するかはそれぞれだが、開催も残りあと数日となった今、見逃している人はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。歌舞伎町の"今"とのコントラストは、ある種の示唆を与えてくれる気がします。


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Chim↑Pomの卯城竜太さんはこれを「闇市」と表現していた。さしずめ、歌舞伎町の闇市を差配した尾津組を、今回は"Chim↑Pom"が「にんげん組」として、カオスをガバナンスしているとでもいうか。生、あるいは死をもって表現しうる生というのもあるのか、それらはいわば分け隔てなくすべての人間に公平に課せられたある種の作品とも言えようか。
「闇市」というよりは、私がこれを見て最初に感じたのは「河原乞食」、差別的な意味合いではなく、河原から生まれた芸能の源流を感じた。よく歌舞伎がそのルーツにこれを言われるが、つまり、作物の育たない荒れ果てた河原に追いやられた者たちは、芸を行う、あるいは売るものがなければ体を売ることで施しを受け、そうやってやっと生きてきたところから始まった。ここは解体を前にした廃墟なわけだが、そこが河原に見えた。もっと言えば、河原が、この街、歌舞伎町全体に繋がっているというか。

だが、なんというか、ある出来事が、意図せずこの催事に意味を持たせてしまった。


報道されていることと、されていないことが混在するが、そもそもそれは、最初、10月2日の夕刻のだった。会場となった歌舞伎町ブックセンタービルの目前、ものの20mくらいのところに位置する雑居ビルからの飛び降り自殺からそれは始まった。その時は、上階より飛び降りた20代女性が通行人を巻き添えにして亡くなった。通行人の男性は頸椎骨折の重傷だったと聞く。たまたま通りがかり第一通報者となったのは、いみじくもSmappa! Groupのホストのコだった。彼が救急車と警察に通報し、同じく現場近くに私自身もいたため、交通整理をしながら経緯を見守っていた。女性は飛び降りた直後は意識はなかったが呼吸はあったので、もしや助かるかと思えたが、その後死亡が確認された。
次は10月の11日の深夜(日付は12日)、再び同じビルからの飛び降りだった。中階のガラスを突き破って1階のエントランスホールにたたきつけられ亡くなっていた。女性は、このビルの店舗の従業員だった。即死だった。さらに10月17日、20時ごろ、場所はほど近い歌舞伎町2丁目のビル。地方からこの日出てきたという29歳の女性だった。かろうじて命は取り留めたと聞いている。そして、ちょうど先ほど、この記事を書いている最中だった。どうやらまた飛び降りがあったと連絡があった。救急車で運ばれているという時に連絡が来たのだが、今のところ状況は未確認。


連鎖する飛び降り自殺。たかだかこの1ヵ月に、3人もが同じ建物から飛び降りたという異常ともいえる現実をどう捉えたらいいのか正直混乱する。ただ、自殺には、それぞれ表情がある。その後の発見によって、まったくの見ず知らずの人間にそれが晒されるという前提があるからだ。週刊誌的に描きやすい背景もゼロではないが、今回の件は、どちらかと言えば相模原で起きた自殺願望のコたちを殺したあの事件にかぶる。トリガーは自殺サイトか、そこで"死ねる"場所を探してわざわざやってきた。
「にんげんレストラン」に直接は関係ないが、彼らの示唆にかぶる、誰にも迷惑かけずに死ぬこともできない世知辛い世の中、あるいは、生きるにせよ、人に必要なのは「場」なのだろう。その「場」はあるのだろうか、ましてや"誰もがイキイキ「生きられる」"場所は、Chim↑Pomのアジテートに乗れば、もはや死にゆく場(廃墟)にしかないというのか。演出された"河原"にたつ者たちは、別に"乞食"ではないし、むしろ真逆のコたちだが、リアルの"河原"に起きた出来事が、意図せず強いコントラストを描いてしまった。そこには、今の歌舞伎町は、今の日本はどうなの?という問いかけがあるように感じてならない。

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