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歌舞伎町が決して忘れてはいけない記憶~44名の尊い命を犠牲にした歌舞伎町ビル火災、あの日から7年~ [その他]

9月1日、7年前のこの日に歌舞伎町で44名の方々が亡くなるという雑居ビル火災が起きた。歌舞伎町では、この火災事件をきっかけにしてその後の歌舞伎町繁華街対策が行われるようになった。今の繁華街対策の原点であり、決して記憶から消してはならない事柄である。

20010901未明 歌舞伎町ビル火災.jpg DSC07741.JPG

◆2001年9月1日未明の歌舞伎町ビル火災◆

2001年9月1日に東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビル「明星(みょうじょう)56ビル」で起きた火災。44名が死亡し、日本で戦後5番目の大惨事となった。多くの死傷者を出した原因は、ビル内の避難通路の確保が不十分であったためとされる。出火原因は放火と見られているが未確定。

◇新宿区歌舞伎町ビル火災の概要(消防資料による)

1 発生日時等
  発  生:平成13年9月1日(土) 調査中
  覚  知:     〃       01時01分(119番による)
  延焼防止:    〃       02時14分
  鎮  圧:     〃       05時36分
  鎮  火:     〃       06時44分

2 出火場所
  東京都新宿区歌舞伎町1丁目18-4 明星(ミョウジョウ)56ビル
  耐火4階建 地下2階地上4階 複合用途

建築面積 83.07平方メートル 延床面積 497.65平方メートル(建物所有者 (有)久留米興産)
着工    S59年10月 1日 使用検査 S60年11月22日

B2  76.78平方メートル 機械室、ニュークラブレイン
B1  74.60平方メートル カジノパラダイスクイン
1階 82.43平方メートル 風俗店無料案内センター
2階   〃           ナースイメクラ(セクハラクリニック)
3階   〃           ゲーム麻雀一休       
4階   〃           キャバクラ(スーパールーズ)

3 概要

3階麻雀店から出火し、4階飲食店に延焼拡大した。3階80平方メートル、4階80平方メートルで延焼防止。なお、出火時3,4階に多数の逃げ遅れ者がいた。
(特記事項)
屋内階段は1ヵ所かつ狭隘で、3階から4階の階段はロッカーが多数置いてあり、消防隊の活動障害となった。3,4階の階段の防火戸が開放されていたため、火炎の拡散が早かった。 


4 焼損程度
3階部分80平方メートル、4階部分80平方メートル、計160平方メートル焼損

5 死傷者
(1)死 者 
44人(男性32人、女性12人)

(2)負傷者 3人(男性3人)

6 消防機関の活動状況
(1)東京消防庁
   救急特別第2出場 救急車 48、火災-第2出場 車両53、計消防車両 101台
    (内訳・救急48、ポンプ・化学25、はしご4、救助6、指揮車6、他12)
   職員 340名 消防団員 21名 計361名
(2)消防庁の対応
 9月1日(土) 
  01時40分 覚知、情報収集開始
  02時00分 第1次応急体制(予防課に災害対策室を設置)
  04時30分 第2次応急体制(消防庁次長を本部長とする災害対策本部を設置)
  05時30分 東京消防庁に予防課職員を派遣
  07時20分 現地に予防課職員を派遣
  09時00分 消防庁長官が現地を確認
  17時15分 第1次応急体制に変更
 9月6日(木)
  16時30分 第1次応急体制解除
7 その他(東京消防庁情報)
  火災原因については調査中

 
2001年8月31日から深夜またぎの9月1日午前1時ごろ、出火地点はビル3階のゲーム麻雀店「一休」のエレベータ付近から出火。第一通報者はその後の調査により、携帯電話の発信履歴から4階「スーパールーズ」従業員の中村さゆりさん(当時23歳、この火災で死亡)らと思われる。中村さゆりさんの遺族(母、すい子さん)によると、遺体は綺麗でやけどの跡はなかったという。被害者のほぼ全員が一酸化炭素による窒息死。

中村さゆり.jpg当時23歳で亡くなった中村さゆりさん。亡くなる10日ほど前に足利の自宅にて撮影したもの。彼女の携帯電話の履歴から、ほぼさゆりさんが第一通報者とみられている。

当時建物にいた客と従業員のうち、3階の19名中16名、4階の28名全員の計44名が死亡。3階から脱出した3名が負傷した。ビル3階と4階のセクシーパブ「スーパールーズ」の防火扉が開いていたため、この2フロアに特に煙の回りを速めたこと、また避難をしようとした客と従業員らが屋上に上がろうとしたものの、出入り口を荷物らで塞がれ脱出不能状態だったことなどが被害を大きくした原因とされている。3階ゲーム麻雀店で助かった3名は、事務所の窓から脱出した従業員。また、目撃証言から「4人目」の生存者がいたとされるが、この人物はその後不明。

◇裁判等その後の経緯(民事・刑事訴訟)◇

■民事:2003年2月、ビルのオーナー及びテナントの関係者など6名が消防法違反、業務上過失致死の疑いで逮捕。
明星56ビルは東京消防庁から使用禁止命令が出、さらに犠牲者の遺族がビル所有会社と6被告らを相手取って提訴した損害賠償訴訟の過程で保全処分が出されたため、そのまま残されていた。2006年4月18日、民事裁判について概ね和解が成立したため保全処分が解かれ、その後解体された。ビル管理会社「久留米興産」やビルの実質的オーナーの瀬川重雄被告らとの民事裁判は最終的に2007年3月2日に終決、
被告側の支払い総額は約8億6800万円。

■刑事:業務上過失致死傷罪に問われたビル所有会社の実質的オーナー、瀬川重雄(66)ら6被告の判決公判が行われたのは今年2008年7月2日、東京地裁で開かれた。業務上過致死傷罪に問われていたのは、瀬川、永井両被告のほか、ビル所有会社社長、山田一夫(56)、3階マージャン店の元実質的経営者、伊沢義司(48)▽元同店店長、松元輝二41)、4階飲食店元経営者、後藤雅之(34)各被告。6被告はいずれも無罪を主張してきたが、一方検察側の主張は「被告らは防火扉の管理や避難経路の確保などを怠り、被害を拡大させた」と主張。瀬川被告に禁固3年、執行猶予5年(求刑禁固4年)、5被告を執行猶予付きの有罪とした。3階マージャン店関係者永井伸二被告(44)は無罪。

2001年9月1日の歌舞伎町ビル火災を契機に、その教訓を生かすべく、その後消防法・火災予防条例等が改正された。2002年10月25日の消防法改正ではビルのオーナーなどの管理権限者は、より重大な法的責任を負うこととなり、防火管理意識を高めるきっかけになった。また、自動火災報知設備の設置義務対象が従来より小規模なビルにまで拡大され、機器の設置基準も強化された。

とくに違反是正の徹底として、それまで消防の立ち入り検査にあった時間制限が撤廃され、また措置命令発動時の手続きの簡略化、検査員の権限強化、あるいは違反時の公表、建物の使用停止命令、刑事告発などの積極発動により違反是正を徹底。罰則等も強化され、従来の「懲役1年以下・罰金50万円以下」から「懲役3年以下・罰金300万円以下」に、法人の罰則も、従来の「罰金50万円以下」から「罰金1億円以下」に引き上げられている。

その後、現在にまで続く歌舞伎町等繁華街対策が、この歌舞伎町ビル火災がきっかけになって始まったと言っても過言ではない。従って、繁華街対策の最大プライオリティは減災社会の実現にあることは言うまでもない。歌舞伎町対策でいうところの「文化・芸能の街」なんたらかんたらと言う口当たりのいい言葉は実はあまり意味をなしているものではなく、実質的にこの減災社会実現のために何をどうすればいいかというところがこの街づくりの根幹にある。そのために、たとえば老巧化した建物(歌舞伎町では築40年を超える建物が全体の6割を占める)の更新、建替誘導、及びインフラ整備を第一義とし、その足かせとなるもの(様々な要因はあるが、例えば風俗を寛容しにくいのは建替資金の融資を受ける銀行がこれを暗黙に拒否的であることから、一面的な見方ではあるがこういった業態に依存する街構造を足かせと言える。当然暴力団関与や違法店舗があればなおさらである。)の排除という意味で暴力団対策、違法風俗対策が存在する。

一方で、歌舞伎町ビル火災などを象徴として、街の危険なイメージからの脱却という意味で、各イベントなどが実施されるようになった。このブログでもたびたび登場する「よくしよう委員会」や歌舞伎町ルネッサンス活動といったものなどもこれをきっかけとして設立された。ただ、それらがよく行うイベント実施は、当初「歌舞伎町ではこんなこともできるようになった」的なイメージ回復というだけのもので、やってマイナスにはならないかもしれないが、少なくとも抜本的な街の改革とは言い難い。そういった側面からの指摘から、例えばよくしよう委員会の活動などもパトロールを恒久的に、また日常的に行うなど実質的な活動にプライオリティを置くように大きく変化をしてきている。

DSC04308.JPG城克(じょうまさる)歌舞伎町商店街振興組合事務局長も「一番最初のきっかけが、この歌舞伎町ビル火災でした。それによって、たとえば歌舞伎町よくしよう委員会が設立されたり、イベントをやるようになったのもそう。今やっているすべての活動の“根本”にある出来事です。」と話す。とはいえ、3000を超える事業所・店舗の2割が一年で入れ替わる街、歌舞伎町ビル火災の記憶が薄れるとか以上に、それを知らない人たちもどんどん増えて言っている。「実際に火災予防条例などが改正され、逃げ道が塞がれるような建物は今は無いし、消防的な火災事故対策はかなりできているでしょ?これは大きいよね。それは、テナントが入れ替わり、その歌舞伎町ビル火災を知らない人が入ったとしても、ビルは管理しているから。だから防火管理意識は絶対高まっている。安全になったと言い切れる。
確かに記憶と言う意味では、人やテナントの入れ替わりもあり風化して来てしまってはいるが、こういった防火管理意識が当たり前になっているからね。
当時と今を比較してそれを知っている人間にとって見れば、その違いは歴然だと感じるはず。ボヤは常に起こりうるし、仮にあの程度のボヤが起きたとしても、44名も犠牲になることは今の歌舞伎町ではありえない。あそこでやっていた違法な営業店舗、カジノ、エステというのは営業自体が違法だからその後の警察の手入れでほとんどなくなっているのも現実。」そう考えれば、歌舞伎町ビル火災の記憶は薄れていったとしても、システムの中にこれに起因するつながりがどんどん形成されている今の街づくりの中にその魂は生き続け、そしてそれが拡がりを持って前に進んでいると城さんは言いたいようだ。

城さん(オフィシャルブログ:歌舞伎町のジョーで~す!)はこの歌舞伎町ビル火災に彼自身運命的なつながりを感じているという。「実は、火災事故の日、前職(朝日生命)の人事課に希望退職の書類を持っていった。その前の日に同級生で歌舞伎町の振興組合で事務局にいた下村治夫(現新宿区議)のところに来年の三月に朝日生命を辞めるよと言いにいった。そして今のこの職(歌舞伎町商店街振興組合事務局長)に繋がっている。そんな翌日、なんだかヘリコプターが飛んでるなと思ったら歌舞伎町のビル火災事件が起きていた。今では街の真ん中に立って、自分でも天命と思える仕事をしている今、だからこそ、運命的というか、本当に自分の今の職というのはそこにもある。」と城さん。

DSC01048.JPG今年も、8月31日深夜から0時またぎで歌舞伎町ビル火災の遺族の方々が現場に訪れ花を供えた。

DSC01055.JPG第一通報者で被害者となった中村さゆりさんの母、すい子さん。すい子さんの手と首には、さゆりさんが当時身につけていた時計と指輪、それにネックレスが今でも光る。

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この日は、遺族の方々が数名で「放火犯はまだ捕まっていません!」と呼びかけるチラシが現場でまかれた。

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道行く人たちが現場で亡くなった人たちに手を合わせる姿もあった。上の右の写真で手を合わせていたホストのコはまだ23歳だと言う。「7年前のことは知らないのでは?」と聞くと、「いえ、でも歌舞伎町で働くものとして忘れてはいけない、こうして手を合わせるのは当然のことです。」と話してくれた。

DSC01105.JPG丁度グリーンバード歌舞伎町チームの2周年でパーティの合間であったが、杉山文野クン(グリーンバード歌舞伎町チームリーダー)も手を合わせに訪れてくれた。彼は当時この現場から離れていたが、ニュースを見た友人から「お前のうちのほうじゃないか?」と言われてあわててこの現場に駆け付けた。文野クンの家は、同じ歌舞伎町一番街でビルや飲食店を経営している。また消防にも記憶を消さないためにという意味での寄稿をしたことがある。

民事・刑事とも裁判は終結し、近くこの歌舞伎町ビル火災の遺族会は解散する。現実には、遺族会と言っても、中には一等親ではない人たちも多く混ざり、またそれぞれの考え方も決して一枚岩ではなかった。事件から7年かかった裁判もようやく終結し、一つ肩の荷を下ろすかのように遺族会は解散に向かっている。しかし、放火犯は未だ捕まっていない。遺族会のコンセンサスが一つになれなかったことや、裁判の特殊性(ビルオーナーや管理権限者に対する訴訟という部分)から放火犯に対する捜査要求や活動がいま一つ及び腰になったという側面は否めない。しかし、実際放火犯にはどう見ても刑事的にはおろか民事的にも責任があるのは当然である。捜査は警視庁が続行してはいると言うが、実際のところすべての情報をすでに裏付けから調べ上げた上でつぶしてしまっている関係で、新たな情報がないとなかなか進展は期待できないのが現実。裁判終結を機にとは言え、すでに捜査本部もなく、情報提供の受け皿(一応警視庁と言って差し支えは無いとは思うが。捜査一課担当案件)すら迷走する中で、それでも遺族の方々の数名は「放火犯を探してほしい」と訴え今回のチラシまきという行動に繋がっている。民事で一つの節目を、そして先の刑事裁判で更なる節目を迎え、しかしまだまだ心には決して平穏は訪れない。いや、むしろこれまでの裁判や遺族会という中で抑えてきたわだかまり感がむしろ今になって強くなってきているのかもしれない。そう、失った命は決して戻らないから。

放火殺人の時効は15年、2016年8月31日に迎えることになる。せめてそれまでに捕まるか、あるいはもし言葉が、心が届くなら自首してほしい。遺族の方々全部に会ったわけではないが、少なくとも自分が会ったこの人たちの時間はあの日から止まったままなのです。

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9月1日、=明星56ビル火災の教訓を風化させないために=新宿消防署が歌舞伎町地域の夜間立入検査を実施

平成20年9月1日(月)、17時30分から20時までの間、新宿消防署が歌舞伎町地域にある雑居ビル50棟の一斉立入検査を実施した。平成13年9月1日に44名という未曽有の犠牲者を出した「明星56ビル火災」(歌舞伎町ビル火災)から7年、今年の7月2日には東京地裁でビル所有者やテナントの管理権限者等に対する有罪判決が下った。この火災の惨事を契機に消防法等が大きく改正され、ビル所有者やテナントとして利用者に対し階段や通路に避難の障害となるものを置くことを禁じている。

しかしながら、約600棟に及ぶ小規模雑居ビル等が密集し、3,000件ある歌舞伎町地域のテナントは年間に約2割が入れ替わり、新規テナントや従業員の防火意識が薄れやすいという現実がある。そこで、新宿消防署としては、この歌舞伎町ビル火災の発生した日にビル所有者やテナント関係者に明星56ビル火災の教訓を風化させず、同様の火災を二度と繰り返さないために、避難施設や防火設備(防火戸)等の維持管理状況に主眼を置いた立入検査を実施。

  1. 実施日時 平成20年9月1日(月)17:30-20:00
  2. 実施地域 歌舞伎町一丁目・二丁目の地域の50防火対象物(ビル)
  3. 立入検査員 延べ25名

DSC01156.JPG立入検査を前に、歌舞伎町ビル火災(明星56ビル火災)現場跡前にて検査員らが黙祷。▼取材随行した班にて、セントラルロードの物件にて。ここでは、公共部分(避難経路にあたる)に可燃性(木製)の棚がくくりつけられていた。災害時等に倒れて避難経路を塞いだり、また可燃性であることから延焼にもつながる危険性があるということもあり、こういった場合改善命令対象になるケースもある。

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この日の検査対象物件は50棟。そのうち9棟にて違反指摘があった。違反件数は9件、内改修件数は8件、命令件数は1件。避難経路にあたる階段などにロッカーやダンボールなどの荷物が積み上げられていたなどの違反指摘だったようだ。違反指摘率は18%と一斉検査(下記データ参照)などの時に比較すると高い。もっとも母数が違うので単純に比較はできないが。

20071115歌舞伎町消防一斉査察資料02.jpg

20071115歌舞伎町消防一斉査察資料03.jpg

平成16年以来年に1回2回程度実施される歌舞伎町一斉立入検査の推移である。数値で見る限りでは、違反発生率も30%から10%程度まで大きく改善傾向にあるとはいうものの、逆にいえば600棟のうちまだその10%の60棟において歌舞伎町ビル火災のようなことが起こりうるということにもなる。

DSC01191.JPG澁谷博子新宿消防署予防担当課長

「今日は7年前に歌舞伎町・明星56ビル、こちらで火災があった日です。今日、立ち入り検査を歌舞伎町全般で行うことによって、防火対象物(ビル)を利用する皆さんの安全性を高める、さらには自分の建物、またテナントからは火災を出さない、そういった意識を改めて皆さんにお持ちいただく、それを目的としまして立ち入り検査を行いました。本日の立ち入り検査の対象は、階段・通路などの避難施設です。避難障害、また延焼拡大の要因となるものが置かれてないか、階段・入口の防火戸の開閉の障害となるものが置かれてないか、こういった避難施設の管理状況に着目した立ち入り検査を行いました。建物を利用される方、また従業員の方を火災から守るためには、そういった避難施設の完備、あるいは法令に決められていることを遵守することが必要不可欠です。ビルのオーナー、またはテナントの経営者の方にはそういった重要性、これをしっかり認識したうえで実践をしていただきたいと思います。」

しかし、現実には歌舞伎町ビル火災の記憶は薄れ、また街の人たちはむしろ忘れたいと思っているということも耳にするが、という投げかけに対し「ここは狭い地域に、建物の数も多く、またテナントの数も非常に多いです。その中でテナントの約2割が一年間で入れ替わり、また入れ替わりの激しいところです。実際、明星56ビルの火災のあったことを認識されていない方も多いと思います。新宿消防署としましては、この新宿歌舞伎町の街を昼間、夜間を問わず折にふれ、こういった立ち入り検査を行って、皆さんの自主管理の重要性の意識に呼びかけをしていきたいと思ってます。
歌舞伎町は雑居ビルで44人の方が亡くなった、こういった貴重な経験を持っている街ですので、皆さんにはそういった意識をきちっと持ち続けていただく、火災予防を徹底しなくてはいけない、また消防署としましては56ビル火災の後にいろいろ法令の改正が行われています。消防署が持っている権限をしっかり行使していく、これらの両面性から街の安全性を高めていければなと思っております。」と澁谷予防担当課長。


 

「街も被害者」という本音が最大の問題

明星56ビル火災について、あるいは遺族の話をすると、それをあまり耳にしくない的な気持ちを見せる街の人たちが多いという現実がある。全部ではない。あくまで一部、いや一部とは言えないかもしれない。ビルオーナーのサイレントマジョリティはむしろそこにあると感じる。

あの火災のせいで街のイメージが悪くなった、店の売上が落ちた・・・云々。上記にもあるが、たとえばイベントを行う根底にある歌舞伎町のイメージアップ、確かに必要なことかもしれないが、イベントをいくら繰り返しても本質的な問題解決には繋がらない。いくら活性化を謳っても、44名の死者を出した火災を起こした「街」という事実は永遠に覆らない。むしろ、そういった建物をなぜ「街」は放置したのか、さらにそれに近い状態の建物も数多く存在しながらそれを容認してきてしまったのか、それは刑事的にとか民事的にという法律上のことではなくともマインドの部分で加害者である事のほうが濃いにも関わらず、意識は今でも被害者のままであるということが、悲しい現実なのかもしれない。

例えば暴力団、違法風俗、歌舞伎町にはまだまだ存在するし、それと知ってて知らぬふり、家賃さえもらえればそれでいい的なビルオーナーの多いこと。「警察に指摘されても知らなかったと言い切れば、ヤツらは裁判になるのを嫌がるからそれで来なくなる。」と嘯くビルオーナーすらいる。不動産屋は飲食店やバーの名前で物件の契約書をつくり、開いてみれば違法カジノや裏DVDショップ、そんな物件がさくら通りなどにいくつも存在してきた。一部のかもしれないが、不動産業者とビルオーナーは確信犯で、またそんな隣人を知ってて容認している「街」。それが常識化しているからこそ歌舞伎町ビル火災にしても「街も被害者」という意識に傾いてしまう。上に書いたが、城さん(歌舞伎町商店街振興組合事務局長)のコメントは一理あるし前に進んでいる部分も確かにあるが、でもまだまだ甘すぎる。城さんの立ち位置による限界というのは理解できるけれども。

抽象的な言い方になってしまうが、テナント関係はむしろ「いいビジネスをすることがいい街づくりにつながる。」と意識は徐々に高まっていると感じる。確かに経営努力の形に問題はいろいろあるが、とはいえたとえば客引きが人を殺すわけではないし、時間外営業で誰かが迷惑するわけでもない。暴力団とかかわらなくても、または関わりを単純に拒否してもマトモな商売なら出来る、そういう状態を警察と志のある一部「街」の人たちでの努力で実現した。さらに、なんにせよ経営努力を怠っては成り立たない競争も激しいそういう街だからなおさらではあるが、一方ビルオーナーの立場は違う。防災という観点からいえば、まさに歌舞伎町ビル火災で44名も死者を出したという経験を持つ街であり、にも関わらずそこを怠っては人を殺すという意識がいつまでたっても薄いまま。確かに歌舞伎町には確信犯的に違法・脱法を繰り返すこともこの街で儲けるコツではある。そこに未だに味をしめ、高い家賃に胡坐をかく、歌舞伎町のビルオーナーの多くは防災・防犯意識はまだまだ極めて低い。あるいは無知すぎる。

この街の街づくりは、だからこそまだまだマインド、心の部分に訴えられるそういうことが求められる。これまでの在り方でしか生きていけない、相続の時には売ってサヨナラ、そんなあきらめの意識を覆すために必要なのは希望、今までと同じじゃなくてもやっていける、生きていける、そして世代を越えて引き継いでいきたいと思える希望、そういうことに繋がる施策こそが求められている。必要な規制強化、運用強化するべき課題はビルオーナー条例や暴力団対策などまだまだいくつかある。そこにさらにコンプライアンス遵守が善意の事業者までもがんじがらめにし、それらだけでは未来が見えてこないし、どんどんビジネスの可能性を失わせていく。投資の誘導だって出来やしない。合法的に営業時間規制の撤廃を目指す「24時間特区」であれ、あるいは公共のカジノの議論であれ、それは希望の光に繋がる。「街」が元気を取り戻す可能性を生む、そういう希望が生まれるはず。人の心が変われば、人も変わる。街は人が創るもの。だから自分はそれを訴えて続けている。


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被害者を飯の種にするとは酷いね

この作者どんな奴だか知らないけど
自身のブログのネタに、被害者のプライバシーとか蹂躙するのは許せない行為だ

火災現場で亡くなった人を、自身の飯の種にするとは、どうしようもない奴だね
by 被害者を飯の種にするとは酷いね (2008-09-21 21:02) 

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