2月18日（月）新宿駅新南口開発ビル（新宿駅南口基盤整備事業）-高さ180m、33階建、5-33Fはオフィス用途-

2月18日（月）、JR東日本（東日本旅客鉄道株式会社）事業創造本部の新宿駅新南口開発ビルに関する説明会が行われた。現在、新宿駅新南口は甲州街道跨線橋の老巧化・耐震性不安などから架け替え、甲州街道の南側人工地盤等交通結節点整備を含む国土交通省とJR東日本の共同による南口基盤整備事業が進んでいる。すでに平成17年度より着工、当初からこの際に新南口の人工地盤上、高島屋手前に超高層のJRビル（新宿駅新南口開発ビル）が建つという話が出ていた。周辺商店街では、この新宿駅新南口開発ビルのテナント構成などによっては周辺の事業者に与える影響が大きいと考え、また最近のJRのいわゆる「駅なかビジネス」の方向性が現実となった場合、周辺商店街への流入阻害を起こすのではないかという危惧など、JRが一体何を考えているのか注目が集まっていた。そして、この日、事業者であるJR東日本による地元事業者向けの説明会が行われた。

新宿駅新南口基盤整備事業と開発ビル構想イメージ

事業者であるJR東日本・事業創造本部、右端が吉田部長。

◆計画概要開発ビルコンセプト（2016年春開業予定、地下2F地上33階前後、高さ180m、延べ床面積約11万㎡）

• エリアの回遊性向上～歩きたくなるまち新宿
• みどりの回廊づくり～環境への配慮
• まちの賑わい演出～新たな活力
• うるおいの創出～文化の発信

開発ビルは高層棟と中層棟とにわけられ、高層棟は現在の新南口改札付近に、中層棟は線路上空に建設される。今回は総合設計を使わずに一般設計で行うことになっている。

今計画の主要棟である高層棟5Fより33Fまでは賃貸オフィス（延べ約8万㎡程度）、「国内外の優良企業をぜひ誘致してまいりたいと考えておりまして、概ね7千名程度の就業者の方を期待できるかなと思っております。」（JR東日本・創造事業本部藤原氏）1Fから4F（中2Fが設けられるためフロア数は5）は店舗とし、店舗部分の延べ床面積は約1万㎡、この1Fから4Fにどういう商業施設が入ってくるのかは今のところ未定とのこと。中層棟・中層部（おおむね4層程度のフロア、約5千㎡）については、地域うるおいゾーンとし、地域の発展に寄与できるような新宿にふさわしいコンセプトを設けた貢献施設を検討していく。地下は2層の駐車場とし、大店立地法を踏まえ約300台規模を予定。また、交通ターミナル整備として、1Fがホーム、2Fが歩行者広場・駅関連施設、3Fが一般車・タクシーの乗降場、4Fが高速バスターミナルとその関連施設と店舗となる。

交通結節点整備における増築という扱いの開発で、計画敷地（左図青線）が約1万8,700㎡、開発ビルの底地が約4千㎡という規模。環境アセスメントの対象とはならない事業ではあるが、「環境アセスに準じたシュミレーションを実施し、環境対策・ビル風・日影・電波障害・交通量等検証を進めてまいりたい。あと、排ガス対策について、国交省からも最新技術の採用ということで検討していただき、たとえば光触媒を交通ターミナルの壁面に塗るとか、現在検討を進めているところです。」（JR東日本・創造事業本部藤原氏）また交通結節部にあたる人工地盤は地震に非常に強い構造をしているということで、震災時における一時避難所としての用途も期待できる。

◆計画ビル概観

甲州街道上空より南側を見たイメージ

ミロードから甲州街道沿いに見上げたイメージ

甲州街道沿いの新宿駅南口側より今の新南口側を見たイメージ、新南口駅舎を取り壊し、その部分に開発ビルが建設される。奥の車路は交通ターミナル部への導線、貫通通路は高島屋との行き来をする通路を予定。

代々木側から見たイメージ

ビクトリア前付近、街路10号から見上げたイメージ。1Fには商業テナントを配置、地域とターミナル間のにぎわいの連続を創出。

　

高層棟と中層棟の間、線路上空5F部分には緑地広場を設置する。高層棟のオフィスに行くには5Fまで上がってもらい、ここにメインロビーを設置し、ここを通ってオフィスに上がる構造になっている。

・地域うるおいゾーンのコンセプト「新宿の回遊性・活気・魅力をさらに高める場所」として展開

• 多目的ホール：文化・交流の情報発信拠点、各種演劇・美術展、世代間交流・教育関連イベントの展開
• 保育所等の託児サービス・クリニックモール等
• 緑地広場

◆歩行者回遊性・車両の流れ

交通ターミナルへは甲州街道部（2F）より入り、また出るほうは右折左折可能。荷捌きは街路10号より直接出入りし、約10台分の荷捌きスペースを設置する予定。甲州街道・歩行者広場～高島屋サザンテラスまでは2F部にあたる。貫通通路の幅員は約14mを予定。

◆スケジュール（2011年春ごろに代々木側に新しい改札を設置したのち、新南口駅舎を取り壊す。その後に工事着工、完成は2016年春を予定、工期は約4年半）

 

◆問合せ先：東日本旅客鉄道株式会社　事業創造本部大規模開発部門　☎03-5334-1474 藤原・石井

---

新宿駅東西自由通路は2008年度着工、2016年度に完成予定

先だって、新宿区政ならびに新宿駅東西の商店街が切望していた「新宿駅東西自由通路」（幅員25m）がついに着手の運びとなった。当初、新宿駅東口駅前広場から東西自由通路を経て西口広場にかけ東京都・JR東日本・小田急による共同の都市計画決定を目指していたが、ルミネエスト（旧マイシティ）と小田急百貨店の2棟の建て替え計画がなかなか進まず、これにより都市計画決定はできず、あくまでJRとの協定による建設という変則的な手法による運びとなった。総工費は118億、国と新宿区、JRが1/3ずつ負担する。2008年度着工、2016年に完成予定。

↑新宿駅東西自由通路イメージ

新宿駅周辺は2016年度完成を目指す東西自由通路と今回の新南口開発ビルを含む南口基盤整備とあるわけだが、それ以外にもまだ計画決定していないがおそらく同時期に完成目途としようとするいくつかの開発が存在する。今回の東西自由通路の計画決定で障害になっていたルミネエスト（旧マイシティ）と小田急百貨店の建て替え、そして東西自由通路出口部分となる東口・西口駅前広場整備、そして新宿研究会などで盛んに提案されている新宿大通りのモール化、さらにその先には構想段階ではあるが新宿駅上空に人工地盤を作っての新宿駅中央広場なんていうのまで存在する。新宿駅上空の人工地盤と駅中央広場構想はさておき、それ以外のものはそれぞれ工期4～5年、2016年度完成で帳尻を合わせるなら2012年着工、つまりまだ時間があるということになる。ルミネエストでのテナント追い出しや旧借地借家法から定借への契約変更も非常に盛んで、実際にはルミネエストの建て替えは発表こそないにしても計画決定まで秒読み段階にあるとみていい。

6月14日には副都心線が開通、伊勢丹や高島屋が巨額を投じてリニューアルを行い、あるいは改修を進め、また松竹会館のオープンも6月に近づいている。歌舞伎町ではコマ劇場の閉館は年内とみられており、その後2013年度までに着工、やはり2015~16年あたりには完成を目指すとみられている。地域再開発はどうせやるなら長いこと工事ばかりという状態が続くよりは、ある程度、それこそ2016年あたりに一斉に終わるというならそれがいいのかもしれない。地域にとって新宿駅は経済活動の蛇口そのものであり、工事期間においてはその蛇口が細るというのはある意味どうしようもないことだと言える。ならば、これから先、新宿で何が起きようとしているのか、何が決定しているのか、それらを見据えながら民は自分たちの生きる道を探す必要がある。

となると、やはりこの新南口開発ビル、あるいは建て替えられるであろう旧マイシティにしてもどういうテナントが、あるいはどういう企業が入ってくるのかが街の側からは非常に関心の高いこととなってくる。

「汐留には電通、赤坂のTBSのビルには博報堂が入る。新宿には情報発信基地のようなものがないと常日頃思っている。ぜひ、テナント選別にあたっては情報発信、あるいは文化発信の核になるようなキーテナントをぜひ誘致していただけたらなと思います。新宿の地域にとって潜在顧客が7千人増えるということは大変いいことでして、そこでぜひマスコミ関係、または情報関係のキーテナント誘致を考えていただけたらと思います。それと地域うるおいゾーンという非常に曖昧な書き方がされていたが、新宿にはかつて喜劇の殿堂として活況を呈したムーランルージュという劇場があった。もし可能ならば、ムーランルージュのような小劇場も造られたらいいんじゃないか。」（新宿東口商店街振興組合安田眞一理事長）

JR側としては、あくまで新宿駅新南口開発ビルに関しての範囲にとどまった説明会ではあったが、街の人たちから見れば、旧マイシティから東西自由通路、東西の広場再開発など新宿駅を一つと見立てての一つの再開発として説明を受けたい、あるいは質問したいというのが本音だったように見える。だいたいの構想というのはそれでも見えては来ているが、さて、仮に旧マイシティや南口開発ビルにシネコンでも入るという話になったらどうなるかな。

バルト9を運営するT-JOYはJRと組んでシネコンを作ったことがある。同様、駅にシネコンができたら、あるいはできるとしたら。歌舞伎町の四葉会による劇場街再生から映画館は不要と確定する。なんというか、どうせならそのほうが歌舞伎町のためにも面白い何かが生まれそうな気がするんだが。。