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歌舞伎町街づくりにおける背割り通路(区有通路)等を含む建替え誘導に関する議論について [まちづくり]

歌舞伎町ルネッサンスの活動はひとつに「誰もが安心して楽しめる街づくり」=歌舞伎町環境浄化、つまり暴力団やその資金源である違法なインフラの排除という側面が強調される場合が多いが、それ以上に重要なテーマとしてハード面、つまり建替え等を誘導することで街の構造そのもののインフラ更新というのがある。所謂ハード面での街づくりであり、行政で言うところの地区計画が所管する範囲である。新宿3丁目周辺では地下鉄13号線(副都心線、平成20年6月開通予定)の新宿3丁目駅建設にともない、地下街形成が伊勢丹周辺を含む建替えが誘導されている。長い目で見れば、新宿通りのプロムナード化(歩行者優先道路化)や東西自由通路、駅ビルの建替えなども念頭に含まれこれらが誘引する新宿駅東口エリア全域のインフラ更新が見込まれる。新宿東口経済圏と言うことで、その範囲には歌舞伎町1・2丁目も含まれる。

歌舞伎町1・2丁目については、築35年を越えた建物が約6割以上にのぼり、またとくに1丁目についてはライフラインの老巧化も大きな問題となっている。特に下水道などのインフラはすでに50年を越えているが、戦後の歌舞伎町復興の経緯の中で民間負担で建設されたものが多く、しかし現況では区有地に埋設されていることで更新そのものに架かる負担をどうするか、また埋設されている場所そのものの問題などがある。

ライフラインのインフラ更新について、歌舞伎町特有のペンシルビル(30坪以下、主として風俗ビル化しているケースが多い)からテナントを出して一戸一戸ごとに工事していくことは現実的には難しい。しかし、関東周辺を震源とする直下型の大地震が30年内に起きる確率は70%以上といわれる今日、早急に手当てをしていかなければ、たとえば災害時にまさに歌舞伎町は地下埋設物が破壊され、それこそ臭くて営業など出来ない、まさにスラム化することが想定される。この問題は緊急課題なのである。

さて、これを踏まえ以下に地域のハード・ライフラインを含むインフラ更新を誘導できるかという観点と、特にライフラインの更新を合理的に進める手法として「街区一体型建替え等」の誘導が検討されている。

上記図面は歌舞伎町一丁目エリアにおける「背割り通路(区有通路)」を示したものである。もともと、戦後の歌舞伎町復興の際に作られたもので、建築物の火災時の延焼予防や避難通路、また下水等の排水経路として機能してきた。本来、下水等の排水は表通り側にするのが現在の常識なのだが、歌舞伎町ではこうした経緯によって排水が建物裏に回っている。

  

背割り通路(区有通路)は、そのものずばり新宿区の所有地である。したがって管理責任は区にあり、環境土木部が所管している。しかし、現実には上の写真を見るように概ねゴミ置き場や放置自転車、その他の設置物で違法占有されているケースが目に付く。ここではその違法性を問題にしているのではなく、そもそも区有地として区が管理をするのがマンパワー的に無理があり、また個々のビルの勝手口や非常口的に活用され、それがあることで消防法や建築法上合法な建物になっているケースもあり、しかしながら地下にはライフラインが埋設されそれが極めて老巧化していて更新が必要な状況であるという実態。

上図は表面を靖国通りに面したある街区の現況を示す図である。現況では約15,000㎡の延床面積と109㎡の区有通路が含まれている。

これを、仮に区有通路を宅地化し街区一体型で再開発を行うと、現行法定上可能な延床は23,400㎡になる。実に55%増加する。さらに、これに緊急整備地域等による規制緩和(道路斜線緩和や容積率ボーナス等:但し公共貢献などを具体的に示す必要がある)が加算されると空地なども上手くあわせていけば数十階建ての高層ビルも現実的に見えてくるということになる。選択肢としては、区有通路を宅地化する以外に道路に付け替えし、前面道路を拡げて道路斜線を緩和する、あるいは空地にするなどいろいろありうるが、地権者にとっては資産を有効に活用し、且つ、街区一体での再開発となることでライフライン等インフラの更新を合理的に行うメリットが生まれる。

歌舞伎町では前面道路の狭いところで法定容積率が十分に使用されていない建築物が多く、また築年数も35年を越えた建物も多いことから潜在的に建物更新のニーズは高い。それとあわせ、ペンシルビルのような歌舞伎町の特徴的な建築物についても、なにかしら単独でもライフラインとあわせて建替え更新が可能な施策も必要とされ、これらをあわせて今後議論、検討していくことが必要とされる。

つまりまちづくりの誘導方針の中で、地域がコンセンサスを必要とする項目として

  • 区有通路は街区一体型の再開発を条件に払い下げや付け替えを可能とするのかどうか。
  • 街区一体型再開発以外のケース(たとえば60坪以上など二件以上の共同建替え時)で払い下げ、または付け替え等をするのかしないのか。
  • それぞれの道路斜線や容積率緩和の条件面(公共貢献等、あるいは用途制限)
  • 公共貢献、用途規制の具体案
  • 区有通路の道路への付け替えは道路ごと(たとえば付け替えがさくら通りならさくら通りの地権者全体)で議論すべき問題

などがある。また、再開発時に駐車場付置義務(1台/床300㎡)があるが、特に一丁目の場合は「歩行者優先」なので、たとえば付置義務駐車場を他の集合駐車スペース(サブナード等今後新たに建設する可能性のある地下など)に移す(所謂「飛ばし」)の議論、その際の公共貢献としての用途制限(1Fには飲食・物販以外は認めない、風俗営業や風俗案内所等を不可とする等)はどうするべきか、といった議論が必要となる。

↑さくら通りに面した元かに道楽の㈱マンボー所有地

11月末から行われているさくら通りの株式会社マンボー所有地(森下グループ)解体作業について(12月19日(火)第4回歌舞伎町ライブミュージックプロムナード開催の後半別記事)でも触れたように、ここも背割り通路(区有通路)が含まれるエリアである。背割り通路を含む街区の建替え誘導における方針については協議中の事項であり、まだ方向性が確定していない。確定していない以上、㈱マンボーがいくら要求しても区有通路をなし崩し的に売却し一体開発を認めることは出来ない。したがって、担当者がどう言おうがここに建てようとしている㈱マンボーのソシアルビルは現状では建ち得ない。しかし、こうも言える。仮に誘導方針において街区一体型再開発や背割り通路の払い下げに関する協議と地域のコンセンサス、使用制限等を含む地域と区の方針が決定した時点以降は場合によっては区有通路の払い下げが可能になるかもしれない。(何年後になるかわからないが。)ただ、区有地の払い下げを受け、仮に池袋のセントラルホテルのような脱法的な店舗型性風俗を営業するようなケースが起きたら洒落にはならないがね。

■歌舞伎町TMO(タウンマネジメント組織について)

平成20年度設立を目指し、現在歌舞伎町タウンマネジメント組織(以下TMO)の設立について歌舞伎町商店街振興組合を中心に議論や説明が行われている。そもそもなぜTMOが必要なのか、なにが歌舞伎町商店街振興組合では足りないのか等。説明しているのは行政やコンサルであり、ここは依然上記議論にはまだまだ達していないのが歯がゆいのだが、まぁ無理も無いところもある。

なぜTMOが必要なのか、ということをやや方向を変えて見てみると、たとえば「TMOに何が出来るのか=TMOの権限とは」と考えてみると理解しやすいかもしれない。上記の背割り道路(区有通路)の払い下げや付け替えについての方向性を決めることが、たとえば街区一体の再開発にプライオリティを置くと、必然的に街区一体の地上げを誘引する。規制緩和にともなう使用制限を付け加えた場合の権限はどこに帰属するべきなのか?TMOは街づくりの方向性についての協議組織になりうるが、権限が無ければ協議そのものが不毛化する。権限をTMOに与えない場合、行政はその責任を確実に持つのかどうか、その担保(法的根拠)はどうするのか?まだまだ欠落している大事な議論がなされないまま「TMO設立ありき」的な議論、というより行政による誘導がなされていることが危惧される。

先ごろ、東京都都市整備局は「(仮称)東京都景観計画 【素案】」に対する意見募集(第2回)を1月26日付けで行っている。

「(仮称)東京都景観計画 【素案】」に対する意見募集(第2回)について(東京都都市整備局)

東京都は、平成18年10月に景観条例の全部改正及び屋外広告物条例の一部改正を行い、現在、条例の改正を受け景観計画の策定に向けて作業を進めている。都民等からの意見を参考に、計画の具体的な内容を検討、「(仮称)東京都景観計画【素案】」として取りまとめたもので、これに対する意見を募集しているものだ。

ここで新宿区、特に歌舞伎町に関わる問題としては新宿御苑周辺として文化財庭園等景観形成特別地区における大規模建築物等の建築等に係る誘導区域に含まれている点があげられる。大規模建築物等の建築に係る事前協議制度を適用、庭園内の主要な眺望地点からのシュミレーションを義務付けるとある。具体的には、色彩、広告表示、高さへの配慮、緑化などを許認可の条件とするとある。

まぁ、歌舞伎町の景観を考えると苦慮する自分にとってはある意味当然と言えば当然でもあるのだが、一方で靖国通り面の建物の屋上広告物(主としてサラ金等)は規制方向にあるという点、そしてそれがビルオーナーにとっては「年にベンツ一台が楽に買える収入源」であることを考えると、地域で協議して意見をしてはどうか?と思うところもある。仮に、新宿全域が景観で規制を受けたとしても歌舞伎町だけはそれに逆行しネオンギラギラを目指すのも、街の生きる道としては選択肢の一つであると思う。

こういった見逃してはいけない議論をしない(あるいは出来ない)、また方向性を定めてもそこになんの権限もなく、実体としては現状の歌舞伎町ルネッサンスの悪い側面である「警察・行政が民間を縛るツール」的、ありばい的「民意の担保」にしかならないTMOにはしてはいけない。実質的に機能できるよう権限、まだまだ民間が歌舞伎町ルネッサンスという構造を活用して警察なり行政なりを「利用」するという意識も足りないのだが、少なくともしなくてはいけない議論を避けないで民間が主導できる組織にしなくてはならない。歌舞伎町には「違法」が溢れている。先日の風適法についての問題提起を含め、そういった事を見ないふりするのではなく、あるものとして認知したうえでいかに適正化を図るのかといったことが少しでも出来ない限り、TMOはまたもや有名無実な組織にならざるを得ない。

四葉会(シネシティ広場周辺劇場街の再開発後のイメージ図):図案てらたにこういち

あくまで、個人的に描いたものである。シネシティ広場周辺の興行各社の思惑が合致し、東宝と東急レクリエーション、西武鉄道が主導して再開発を行うとしたらこんな感じだろうか。コマ劇場と東宝会館は高層ビルに建替えられ、新宿TOKYU MILANOビルは西武鉄道の線路の上に東急・西武共同の高層ビルに。つまりツインタワー型の高層ビルを中心に、空地は拡大される。その他の歌舞伎町地区再開発に伴う駐車場付置義務は歌舞伎町の地下街形成に伴って「飛ばし」が行われる。

当然「特区」ありき。しかし「特区」とは公共貢献や地域還元が条件で認められるものであり、高層ビルについて上層階はホテル、下層階はシネコンや劇場、飲食店になると言ってもでは中層階は?という課題がある。仮に公共貢献という対価を支払って得た容積分が中層階の床だとした場合、それが収益的に見込めない場合はそもそも「特区」たる必然が曖昧になってくる。四葉会の実務担当者レベルで問題になるのはこの点。共同で再開発をし、特区にしても増やした容積が埋まるのかどうか、公共貢献や用途制限が企業としての経済活動にどれだけ負荷を与えるのか、大きなコストを必要とする再開発事業なだけに各企業とも慎重にならざるを得ないわけだ。

しかし、形はどうあれ再開発は行われる。平成20年度末を目安に定期借家へと契約が切り替わる時期を目途に、コマ劇場や新宿TOKYU MILANOビルは本格的に再開発へと向かう。考えなければいけないのは、その期間である。平成20年、つまり2009年から少なくとも2010年代前半にかけてコマ劇場なり東急系の劇場なりは閉鎖される。四葉会各社が合意形成されていれば、シネシティ広場周辺の多くの事業所が閉鎖されるわけだから、当然歌舞伎町への人の流れが激変する。劇場通り一番街や西武駅前通り、そして四葉会エリアの背後側の二丁目エリアへの人の流入は極端に少なくなる。おそらくエリア内の飲食店は営業的に大打撃を受けるであろう。

すでに、いくつかのビルは四葉会エリア再開発の時期を目途に建替えの話が出てきている。しかし、建替えには相当の資金が必要であり、場合によっては売ってしまう地権者もいるだろう。また、上記のように街区一体型の建替えが誘導されれば外資やファンド等の豊富な資金が流入、地上げも絡んで2009年から2010年代前半にかけて歌舞伎町は否が応でも大変化をすることになる。この期間、約5年。今、歌舞伎町が環境浄化に伴い特に社交飲食業などが「厳しい」と漏らす中で自分が言うのは、「歌舞伎町の経済活動が本当に厳しくなるのは2009年以降の最低でも5年間、場合によってはそれ以上だろう。」ということだ。

今街づくりの議論に関わり、一見前向きに考えているであろう事業者、地権者の多くが、実は再生された歌舞伎町に存在していないことすら、実は想像に難くない現実でもある。


2月5日(月)歌舞伎町グリーンバードによる清掃ボランティア

歌舞伎町区役所通りのイルミネーション(歌舞伎町区役所通りイルミネーション実行委員会:藤沢薫代表、関連記事)が1月末をもって終了した。11月20日より約70日の間、区役所通りをエレガントに照らし出したこの期間、グリーンバード歌舞伎町チーム(チームリーダー:杉山文野クン)は毎週月曜日19時から歌舞伎町地区ゴミ拾いのボランティア活動を行ってきた。歌舞伎町グリーンバードの活動はこの日2月5日より通常のローテーション(毎月第一・第三月曜の19時から)に戻ることになる。

 

いつものように19時、劇場通り一番街のアーチ下に集合。リーダーの杉山クンがゴミ拾いのコツやコース等について説明。

最近は30名以上の参加者があるためチームを二班にわけ、歌舞伎町一丁目エリアを廻るチームと二丁目を廻るチームとにわけて活動。最後にシネシティ広場に集合してゴミを分別、ゴミを広げて作業するため周囲が汚れるので、分別が終わったら水撒きをして終了。

 

みんなで集合写真、この日の参加者は33名。そのほとんどが歌舞伎町外からの参加。本当にアリガタいことです^^。ゴミを拾いながら歌舞伎町に慣れ親しみ、そして終わった後はみんなで飲み会(↓アジア横丁ティハールにて)

ゴミ拾いはきっかけであり、むしろこうしたコミュニケーションの方に実があり、また参加者の多くがそれを楽しみにしているよう。なお次回グリーンバード歌舞伎町チームは2月19日、19時から(歌舞伎町劇場通り一番街アーチ下集合)です。


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