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歌舞伎町初の本格『歌舞伎』!中村獅童オフシアター歌舞伎「女殺油地獄」5月22日、新宿FACEにて初日を迎える! [イベント]

そもそも「歌舞伎町」が生まれたのが昭和23年4月。戦後のこの地域の復興に奔走していた当時の町会長・鈴木喜兵衛氏と、東京都の石川栄耀都市計画課長の間の会話からこの街の名は生まれました。

鈴木喜兵衛氏は、「今、心あるものは自分の事など考えている場合じゃない、商店街や住宅は、土地使用については再編成すべきである。町会は計画復興をする。私らの町では借地権は私が一番多く持っているが、借地権をたくさん持っているものは、納得のいく方法があれば、進んで開放して土地利用を再編すべき」と呼びかけ、また、「東向きに芸能施設をなし、道義的繁華街を建設する」という構想を訴えました。

鈴木は「東向きに芸能施設をなし、道義的繁華街を建設する」という構想を訴え、東宝の小林一三を説得し、東宝による歌舞伎劇場「菊座」を誘致し、劇場街を中心とした街づくりの核としようと考えていました。石川はそれを聞いて、「それならば歌舞伎町がよいのではないか」と言って、それがそのまま街の名に、町名「歌舞伎町」は誕生しました。しかし、その後のGHQ施策の突然の臨時建築等規制と預金封鎖の金融緊急措置令が発動し、計画は頓挫、歌舞伎劇場建設の計画は中止に追い込まれました。

昭和30年ごろから改めて劇場誘致等が行われその後の興行街を中心とした歌舞伎町の変貌と発展が現在までの街の礎となっていますが、結局、歌舞伎劇場が建てられることはありませんでした。こうして歌舞伎劇場なき「歌舞伎町」という現在の姿になったわけです。


さて、5月22日より新宿Faceにて初日を迎えた中村獅童オフシアター歌舞伎「女殺油地獄」。実に、歌舞伎町誕生以降、歌舞伎町でこれがはじめての松竹"歌舞伎"公演となります。

まさに、先人たちの『道義的繁華街』建設への想いが、こうして70年の月日を経て、今具現化されました・・・とはちょっと大げさですが、しかし、その"芽"にならないかなと期待を込めての、松竹歌舞伎、歌舞伎町初登場です。


歌舞伎町に歌舞伎劇場はできなかった。しかし、意図せずして、その街の名の音が、この地に、まさに"かぶき者"を寄せ集め、今に至ったように思うのです。"歌舞伎"の語源は「傾く」の古語、かぶく、から来ているといわれています。派手な衣装や一風変わった異形を好むもの、常軌を逸脱した行動に走るものたちを「かぶき者」と呼び、そうした「かぶき者」の派手や斬新を取り入れた「かぶき踊り」が「歌舞伎」へとつながった。やがて「歌舞伎」は演劇となり、江戸後期は特に大衆娯楽として人気を博す。我々が持つ"歌舞伎"像は、ほぼこの頃に完成した、時代の人たちの風俗の物語です。大衆のモノだった歌舞伎が、明治以降、政府の干渉もあって様々な変化を余儀なくされ、同時に、政策でもうちょっと"高尚"な『文化』に押し上げられたあたりから、状況はだいぶ変わって、徐々に大衆のもの、ではなくなっていったのではないかと思います。おそらく、歌舞伎界の内部にもそういったことによる恩恵と裏腹に失望や批判もあったのではないかな。


ちょっとお高いところまで行き過ぎた『歌舞伎』を、大衆に取り戻す、なんとなく、そんな中村獅童さんの気概をどこかに感じる気がするオフシアター歌舞伎。そして今回の演目、「女殺油地獄」は近松門左衛門の後期作の世話物、江戸の時代の庶民の日常、市井の話題や風俗を扱った演目の一つです。どうしようもない放蕩息子の挙句の殺しの話です。中村獅童さんという方の声は、もともとなんとなく甘えん坊な感じがありますね。それがうまくはまってて、というのもあってか、放蕩息子の与兵衛に気持ちが持っていかれる。さすがでした。リアルかぶき者の街"歌舞伎町"で初の本格『歌舞伎』公演という背景も相まって、最後の、獅童さんの深い深いお辞儀が沁みました。


とか何とか言って、実は、私、『歌舞伎』を生で見たのはこれが初めてでして。なもので、解釈等、いろいろ間違いがあったらすみません。ちょっとお高くとまった、高尚な『文化』風な歌舞伎を大衆のものに、なんて言いながら、歌舞伎座に歌舞伎を見に行くなら着物を着て帰りは銀座で~なんていうのも楽しそうだななんて思ってました。さすがにオフシアター歌舞伎、今回は着物を着て見に来てる人は見かけませんでしたが、いつの日か、歌舞伎町に歌舞伎を見に行くなら着物を着て、帰りは新宿で~なんていう日が来たらいいななんて思ったりもします。

いつもの四角いプロレスのリングの土台部分が今回の舞台でした。周りを360度観客が囲むので、席の向きによって役者の表情も見える見えないがあったりはしますが、歌舞伎座の舞台にくらべるとはるかに近いし、低いし、案外見やすいかもしれません。


まあしかし、あくまでこれは"序"なのかと。この先が、あるのか。

チケット、まだあるようですよ、29日までです。ぜひ、時間があったらご覧になってもよいかと思います。


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〇オフシアター歌舞伎「女殺油地獄」
2019年5月22日(水)~29日(水)


300年前、事件(それ)は起こった
我々は何も変わらない―

2019.5.22-29 新宿FACE
中村獅童、中村壱太郎、上村吉弥、嵐橘三郎、近松門左衛門 作・赤堀雅秋 脚本・演出

天王洲の倉庫、そして歌舞伎町の混沌(カオス)で―
かつてない劇空間
かつてない顔触れによる
新しい傾奇(かぶき)芝居をおおくりします

【オフシアター歌舞伎《女殺油地獄》】
料金:税込 指定席 11,500円 ※全席、パイプ椅子席となります。
会場:歌舞伎町・新宿FACE(新宿区歌舞伎町1-20-1 ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町7F 新宿FACE)


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