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歌舞伎町における映画の撮影方法についてー歌舞伎町一番街で映画を撮るには? [まちづくり]

歌舞伎町における映画の撮影方法についてー

歌舞伎町で撮影した映画というと、かつては「不夜城」(1998年、アスミックエース)、「新宿インシデント」(2009年、ショウゲート)、「エンター・ザ・ボイド」(2009年、コムストック)などがありました。「不夜城」は風林会館前付近の裏路地ほか、「新宿インシデント」はセントラルロード界隈でワンカット、エンター・ザ・ボイドはさくら通り、2丁目Lee餃子付近ほかで撮影を行った"形跡"があるが、これらに関しては当時、正規の許可があったかどうかは不明。
よく言われてきた「歌舞伎町では撮影(道路使用)許可が下りない」(実際に下りなかった)の背景は、「警察にもコントロールできない輩(酔客、ヤクザ)が集まるから」「映ってはいけない人(ヤクザ・警察公安関係者)がいるから」などというある種"都市伝説"的な側面(一理あるかもしれないが)は確かではなく、また、そう言うわりには、この街で撮影したカットのある映画(番組)はまあまあある。そしてさらに・・

「ウルヴァリン: SAMURAI」(2013年、20世紀フォックス):新宿西口地下道、靖国通り
「さよなら歌舞伎町」(2014年、東京テアトル):2丁目「ホテルアトラス」付近ほか
「新宿スワン」(2015年、ソニーピクチャーズエンタテイメント):旧新宿ミラノ座屋上、一番街ほか
「新宿スワン2」(2017年、ソニーピクチャーズエンタテインメント):一番街ほか
「ラブソング」(2016年4月11日~6月13日放送、フジテレビ):一番街ほか

歌舞伎町(あるいは界隈)で撮りたい、街を舞台に撮る方法はないか?という問い合わせも多く、実際、ニーズは高い。また、最近の上記作品群はほぼ、"正規"の許可を得て、実際に歌舞伎町を撮影場所として使用した映画、番組です。
これらは、実は最近、歌舞伎町における映画撮影の許可回りについて、その環境が大きく変化しつつあるから実現しているもので、また、2020東京オリンピックに向けて、まだまだ、例えば国内だけでなく、海外のテレビなどからも撮影協力を依頼される機会も増えてきそうなので、この"明文化"(公式化)されていない、現時点での「歌舞伎町における映画撮影の方法」についてまとめておこうと思います。

なお、撮影に関する規制は、一般の交通・通行人の妨害とならないためのものであり、報道目的やそれに準ずる記録・撮影で三脚などを使用しない単独の移動(手持ち)カメラ撮影など警察の道路使用許可を必要としないものもあります。当然ながら、撮影機材やシマ、出演者、カメラ位置が私有地(空地、屋上、建物内など)で収まっている場合は、その所有者の許可で撮影は可能、警察の道路使用許可は必要ありません。

まずは、写真参照:新宿警察署管内におけるロケ規制区域(新宿警察署交通規制係)
20160622新宿ロケ規制区域460pix.jpg
歌舞伎町1丁目全域、および新宿駅周辺の新宿警察署管内エリアがロケ規制区域。区域外は、基本的な道路使用許可上の注意点(下記参照)を守る前提があれば、撮影のための警察の道路使用許可はおります。
以前は歌舞伎町全域禁止という頃もあったように思いますが、今は、一言でいえば歌舞伎町2丁目は撮影のための道路使用許可が下りるのです。規制区域外での撮影の場合は、直接新宿警察署交通規制係に許可申請(指定の書式あり)をおこなってください。
なお、花道通り(歌舞伎町1丁目・2丁目境界)は規制上は1丁目の区分となっており、歩道も含め規制区域となってます。それから、新宿ゴールデン街(歌舞伎町1-1)は全域私有地のため、ここを所管する三光商店街振興組合 http://goldengai.jp/pg3.html 03-3209-6418)に直接撮影の許可申請をしてください。(※要申請費用)

さて、とはいえ、歌舞伎町でどうしても"らしい"絵がほしい、となると、大方、一番街のアーチの映り込みの夕・夜景、ということになるわけで、しかし、ここは「ロケ規制区域」、通常、新宿警察署に道路使用許可を申請しても許可はおりません。
例えば、一番街アーチが映り込む、第2東亜ビル前あたりで撮りたい・・・という場合(そのほか、規制区域全般も同様)どうすれば可能となるのか、を手続き順に記載します。

①映画(番組)の企画内容(台本など)等、撮影計画(日時、場所、スタッフ、出演者、および機材・キャストの配置図など)を用意

②ロケ規制区域内で撮影許可を出す前提条件として、地域の振興・活性化への貢献、つまり「公共性の担保」が必要ー
私企業・個人の利益のために許可は出せませんよと、あくまで公共の利益にどれだけ貢献できるのかという話なのだが、これが結構わかりにくい。これを最初に相談する場所は、歌舞伎町TMO(タウン・マネージメント=区外郭まちづくり組織 http://www.d-kabukicho.com/ 03-3207-4516)、歌舞伎町商店街振興組合(http://www.kabukicho.or.jp/ 03-3209-9291)、あるいは新宿区役所特命プロジェクト歌舞伎町対策担当(03-5273-4235)。
どれか一つで、となると、歌舞伎町TMOが一番ふさわしい窓口なのですが、結局、この3者の了承は必要となるので、どこからあたってもらってもいいかと思います。

③企画内容のヒアリング、撮影場所の相談、警備計画など安全性、協議を踏まえ、最終的に新宿区またはTMOが「後援」的なものを出せるものなのかどうかを判断。
結局のところ、書面上でいうところの、区またはTMOの「後援」というのが、「公共貢献の担保」になります。また、商店街では撮影場所の近隣調整をすることが可能です。
商店街振興組合、新宿区は、「歌舞伎町を映画の街に」という指針を持っているので「映画撮影したい」はそれ自体を公共貢献と言えなくもなく、基本歓迎だと思いますが、区側のジャッジ、公共貢献としての何かしらの具体的要請、商店街の近隣調整あたりが可能かどうかが事実上のフィルターになってきます。ここで、何かしらの公共貢献的イベントの計画・実施など物理的コストが発生する場合はあるかもしれません。

④区または歌舞伎町TMOの後援がついた(=書類上の公共性担保)となったら、新宿警察署交通規制係へ。必要な書式一式を揃えると、ロケ規制区域内で撮影のための道路使用許可(最長15日間まで、申請費用2,100円)が下ります。

⑤特機(クレーン・レール類)を使用するなど規模の大きな撮影の場合、道路上に設置は認められません。道路以外の私有地(空地)に設置することが求められますので、これは商店街などに相談するといいかと思います。そして、撮れなかったはずの歌舞伎町一番街での映画撮影が実現!!

例えば、トライストーンで撮った「新宿スワン」は客引き・スカウトなどの迷惑行為撲滅活動に協力するということで"公共性"を担保しました。また、雑踏警備は、警備員を多数配置するに加え、むしろそこにいる人たちの多くをエキストラとして採用し、出演許諾を得て、乗り切ったようです。

とはいえ、これは、明文化、つまり、公式化した許可手順ではないため、必ずしもこうなりますよ、とは言えませんが、明らかに『可能性』があることを示しています。

歌舞伎町における映画撮影許可の手続き回りは、未だ「調整途中」であるのは事実です。例えば、どのような時間帯であれば雑踏整理が可能かどうか、逆に言えば撮影可能時間の明示のようなものもまだありません。企画が持ち込まれたごとに、都度図っていくことになります。
課題も多い。撮影可能性がでてきたとはいえ、上記の①~⑤の間に必要な時間は、現状3~4ヶ月かかると考えてください。例えば、④~⑤の間だけでも、新宿警察署から公安委員会へ申請して交通規制解除の手続きだけでも約1ヶ月かかります。こうした「時間」は、映画や番組の予算・制作コストを圧迫するわけで、そういう意味では、この3~4ヶ月が、せめて1ヶ月くらいまで短縮できないと、なかなか事業のスキームにはのってこれないかもしれません。現状、これは、新宿区、警視庁の、いわゆる公共空間活用のための「社会実験」の一環であり、その間、事故なく事例を積み重ね社会実験を終了し、新宿区・歌舞伎町TMOがこれを事実上の明文化(公式化)、またはシステム化していくことが求められることになります。

ただ、扉は開かれたわけです。ゲリラや無許可撮影は小作品では可能かしれませんが、大作では絶対、不可能。こうしてスキームが組みあがっていきそうだからこそ、無許可の撮影にはむしろ厳しく対処、配給会社を逮捕して公開を差し止めるなんてこともあるかもしれません。

方法をクリアできれば、"合法的"に歌舞伎町で映画は撮れるのです。と、なったところの意味は非常に大きい気がします。最終的な規制当局である新宿警察署交通規制係の木村係長が「歌舞伎町のためになるなら、撮れないより撮れたほうがいいでしょう?」と判断してくれて、しかもそれを書くことを承諾してもらえたので、こういう形で公表しました。
参考:
《映画(番組)撮影における道路使用許可の注意点》
・撮影の時間、場所、内容等から判断して一般の交通の妨害とならないようにする。
・撮影は原則として歩道上(歩道のない場所、車道左側端)とし、一般通行人の妨害とならない方法で行うこと。
・照明機材を使用する際は、運転者を幻惑させないようにすること。
・混乱を避ける為、道路上で出演者などのサイン行為はしないこと。
・撮影内容、出演者等を勘案し(人気の度合いなど)、交通の危険及び交通の妨害を発生させないために十分な交通整理員を配置すること。
・交通の危険を防止し、その他交通の安全と円滑を確保するために行う警察官の指示については、厳格に励行しそれに従うこと。
・階段・エスカレーター及び歩道橋等に撮影見学者が集中し、落下事故等の発生が予想され、もしくは一般通行人に対しても交通の危険が予想される場合は、中止すること。なお、この場合はただちに警察署(交通課)に連絡すること。
・撮影現場では、必ず許可証を携帯しておくこと。
・中継車は、電源コードその他資機材を交通の妨害にならないようにすること。
・ロケバス、資機材車等の路上駐車は絶対に行わないこと。




視点を変えて。こうした、ある程度自由な社会環境(自己責任度はあがる)に変化させていこうという取り組みは、ロケのことに限らず結構あったりするのですが、なぜこれらがうまくいかなかったか。
一言でいえば、多数の利益より、たった一人(あるいはごく少数)のクレーマーに、行政や警察、いわば「公共」側が耐えられないあたりに、もう少し深い問題がある。
全体主義が社会の閉塞感をつくるのは事実だが、その全体主義を引き起こしてるのが、実は、たった一人の、声の大きいクレーマーだったりする、というおかしな現実。多数の利害、少数の利害、このくらいのバランスでまあいいんじゃないか、といった「ちょうどいい」をひろえるスキルが、今の日本社会は低くなってきているのでしょう。
簡単そうに見えることが、公共側(行政や警察)から見ると、実はすごくコストがかかってるなんてことは意外とあるんです。政治が本来そこを調整する役割を持ってるはずなんですが、できてない。日本の政治不在はこんなところにも出てるんですね。

《第24回参議院議員通常選挙》
2016年6月22日公示、7月10日に投開票実施

《2016年東京都知事選挙》
2016年7月14日告示、7月31日に投開票実施
※東京都議会議員補欠選挙(大田区、渋谷区、新宿区、台東区)は7月22日告示、7月31日投開票実施。


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