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自民党・与謝野馨氏(現財務・金融担当大臣)に聞く-選挙の結果の向こうに何が見えるのか。【8.30総選挙東京1区立候補予定者インタビュー第二弾】 [インタビュー]

第45回衆議院議員選挙が8月18日(火)公示30日(日)投票日という日程で実施される。前回、8月5日にこのブログにアップした記事、“民主党・海江田万里氏に聞く-選挙の結果の向こうに何が見えるのか。【8.30総選挙東京1区立候補予定者インタビュー第一弾】”に引き続き、同じく東京1区(新宿区・港区・千代田区)より立候補予定者である自由民主党、与謝野馨財務・金融担当大臣のインタビューを行った。7月27日には民主党(鳩山由紀夫代表)から「政権交代。国民の生活が第一。」と題した民主党の政権政策マニフェスト2009(PDF版)、自由民主党(麻生太郎総裁)は7月31日に「日本を守る、責任力。」のタイトルでマニフェスト要約版(PDF版)政策BANK(PDF版)がそれぞれ公開されている。

東京都第1区は新宿区ほか港区・千代田区を含み、つまりは日本の首都・東京のさらにほとんどの首都機能を抱えるまさに首都の中の首都、選挙のたびに毎回激戦の選挙区となり注目度も高い。また、今回の選挙の自民党と民主党の争点の中心となるこの国の財政の部分、つまりは財務・金融担当大臣の現職である与謝野馨氏は自民党のまさに中心軸である。当然ながら民主党にとっても最大の対抗軸でもあり、いわば第45回衆議院議員選挙は『与謝野選挙』ともいえそうだ。

自民党・与謝野馨氏(現財務・金融担当大臣)に聞く-選挙の結果の向こうに何が見えるのか。

DSC02000.JPG与謝野馨氏(8月10日、四谷の与謝野馨後援会事務所にて)

◇プロフィール:1938年 8月22日生まれ。港区立麻布小、麻布中学・高校卒業
1963年 東京大学法学部卒業、サラリーマンを経て1976年衆議院に初当選(以来当選9回)
1994年文部大臣
1998年通商産業大臣
2004年自由民主党政務調査会長
2005年国務大臣(経済財政政策・金融担当)
2007年内閣官房長官
2008年国務大臣(経済財政政策担当)
2009年財務大臣、国務大臣(経済財政策・金融担当)
2009年財務大臣、国務大臣(金融担当) 
与謝野馨Official Web Siteより

◇インタビュー

与謝野「ああ、あれもよくお客さん来て下さって。」

  • 寺谷「与謝野さんのお話で一番印象に残ったのが、『引退期の終焉』という話でした。」

与謝野「なかなか、余生を楽しむっていう感じが、もうちょっと、70位まで働かないとダメなような社会になってきたんじゃないかな。」

  • 寺谷「昔の60代70代、今の60代70代比べると、与謝野さんも70になりますが。」

与謝野「元気だね。」

  • 寺谷「そういう時代がやってきて、いやむしろ一生働くことが生きがいにでもなるのであればそれもありなんじゃないかなと。」

与謝野「ビスマルクって言う、ドイツの首相が福祉政策の父と言われている。今から何年前ぐらいですかね、1870年とかそんな時代だから、今から140~50年前に、高齢者にお金をあげるっていう、これが福祉政策の始まりって言われてる。
その時ドイツの平均寿命は46歳だったという。だから、皆長生きになってきて、栄養もいいし、医療も整っているし、みんなも健康に注意してるから、どんどん元気で長生きになってきたから。平均寿命が50歳の時の定年制度が55歳なんですよ。だから、年金とか平均寿命とか定年制とかっていうのは全部時代に合わなくなってきちゃった。これは医学の進歩が大きいですよ。」

  • 寺谷「雇用のシステムだとかそういうのも全然追いついてない。」

与謝野「だから、時間がかかるんだけど、少しずつ定年を延長していかないと。
多分、こういう頭の実験をするとすぐ分かるんで、全員引退しているとすると、そういう状況では何も起きないんですよ。働いているのが一人しかいない、後は全部引退、成り立たない。少しずつ増やしていって、どこから先で成り立ついかなと。それから元気な人を、自分が持っているいろんな能力を生かせるような社会システムにしないと、ま、口ではいくらいくら年金をあげます、こうすると言ったって、元々の構成がよく出来ていないとやっていけないんですよね。」

  • 寺谷「政策と言うのは、長い時間をかけてじっくりやっていくものと、それこそ衆議院じゃないですけど、選挙ごとに結果や実績を積んでいかないといけないものと、二通りあるのではないか。例えば、今なんかの場合は無駄を省く、行政効率を上げるとか、そういうことを急務として求められている。」

与謝野「無駄を省くというのは、さっと終わる仕事じゃないですね。政治という営みを続けている限り、やはり相当熱心に、どこか無駄は無いだろうなというのを気をつけてみていかないと、これで無駄が全部綺麗になりましたという世界とか、行政改革はこれで全部終わりましたという世界はなかなかつくれない。だから、無駄を省くんだと、行政改革はいつもやるんだと、そういう絶え間ざる努力というのが求められているわけですよ。
この無駄という概念も、とても難しくて、お父さんは会社の帰りに一杯飲み屋で一杯やる、で、疲れを癒して帰る。奥さんからすれば、ウチ帰ってきてビール飲めばいいじゃないと言う。これも、全然見解の相違になっちゃう。奥さんが通信販売で高い化粧品を買う、旦那から見れば安いんで間に合うんじゃないかと。奥さんにそう言ったら、だってこれいいんだもんって言われたらおしまいだもんね。そこがなんか、無駄一般というのを議論するのはとても難しい。
そこで問題は、決められた通りにお金を使っているかどうかっていう、会計検査院のようなそういう考え方を常に持っていなければいけない。
それから、東京の人は地方に道路を作るというのを無駄だと思う人が多い。地方の人にしてみれば、この道路が一本無いと、片道1時間かかると、そういうのがある。なかなか生活環境によって考え方が違ってきちゃう。そこはなかなか、難しいところなんですけど、無駄は、無駄というか、元々こんな予算を作んなくてもよかったじゃないかというのはあるかもしれない。それから、こういう風に使いなさいと言ったのに、現場に行ったらろくでもないつかわれ方したと。そういうのはあると思うんですよ。ある。それを無くすように最大限の努力をしなきゃいけない、これは正直認めるんですけど、それを無くすと福祉がいっぱいできたり、これも出来たりあれもできたりっていう額じゃなさそうなんですね。」

  • 寺谷「自民党と民主党の議論の一番の違いというのは、簡単に言うとお金の話だと思います。お金があるのか無いのか。自民党、あるいは与謝野さんはお金は無いんだと、無いんだからこんなものだと。より生活・社会を充実したければよりお金はかかると。対して民主党は、例えば財務省の資料が嘘だと。この議論は、国民からはどうしてもある意味どうにもならないというか。」

与謝野「ですから、正直お金があるんだったら、もう我々使ってますよ。お金の溜まりはある。だけど、手をつけていいかというお金があるわけですよ。典型的なのは、年金で預かっているお金ですよ。これはやっぱり手をつけちゃいけない。それから国が売り買いしているもの、ドル、円、やっているわけ。確かに19兆お金が溜まっているんですよ、アメリカの国債があるから。今1ドル97円でしょ、そうすると20兆くらい損してるんですよ。だから、それはその穴埋めに使わないとおかしい。このお金は、実は、本当に余っているときは、1兆円とか、我々も使っていたんですよ。だから本当に余ったら民主党も使っていいんですよ。今は、バランスシートを計算するとマイナスになってますから、使っちゃいけない。
後は、政府が高利貸しをやったのがあるんですよ。政府が借りるというと安く借りられる、それで特殊法人とかなんとかお金が必要なところに高く貸していたんです。だから、ある程度お金が残った、それは事実。」

  • 寺谷「国民にとって不幸だなと思うのが、なぜそういう選択をしなければいけなくなったか。例えば天下りであるとか、官製談合、居酒屋タクシー、たて続きに続いてきた。そのことが政治不信であるとか、政府に対する不信感を国民が増大させてきたことで、どうやら民主党の言っていることのほうが正しいような『気がしてきて』しまう。そこに原因があるんじゃないかと。」

与謝野「仰る通り、どんなに細かいところでも、予算が理屈に合わない使われ方をしたら、国民は怒る、これは当たり前で、自然な感情でまったく否定しない。それは無くすための努力をしなければいけない。ただ、細かいところでなにかがあって、国民が、その話が全体に及んじゃっているんじゃないかと思ってしまうのは、国民にとって、政治にとって大変不幸なことですよ。」

  • 寺谷「だからこそ、仮に民主党に政権を持たせたらはっきりするんじゃないか、多分この『風』はそんなことで吹いていると思うんですよね。」

与謝野「私が申し上げたのは、民主党が政権をとったら、違う世の中になりますという・・・そこなんですよ。彼らの政策はスウェーデン型の高福祉の政策で、それは一つの考え方として成り立つんだよ。相当の覚悟を決めて、やんなきゃいけないと思うんですよね。それだけの覚悟をしたうえで民主党を選ぶと、これは一つの選択なんですよ。だけど、ムードだけでだ~っと行っちゃうと、話が違うじゃないかっていう話になる。」

  • 寺谷「民主党の言っている話も、蓋を開けたら元とそんなに変わらなかったということであるならば、今国家がこういう危機な状態のときに、ひょっとすると同じ答えのために遠回りをする、だからこそ迷うんだと思うんです。」

与謝野「もうひとつは、仕組みを変えると物事が良くなる、と思っている人たちが非常に民主党に多い。ところが、仕組みの問題じゃなくて、社会が変わっちゃっているということですよ。これだけの少子高齢化を迎えるなんて誰も想像していなかった。だから、多分仕組みが、なんとか戦略会議を作るとか、こういうのは面白そうな話なんだけど、知恵とアイディアは我々も相当やりましたからね。そんな変わったことが出来るわけではない。」

  • 寺谷「どうどうめぐりを繰り返し、やはり同じになると想定していれば、与謝野さんが仰っていた『引退期の終焉』は一つの答えだろうなと。ただ、それだけではないだろう。財政を使わなくても無駄を省く、無駄と言ってもさっきのお話のように揺らぎはあるにせよ、その一つで、ちょっとローカルな話ですが、以前思ったのは、地下鉄等公共交通機関の24時間化という話だったんですよね。財政を投下するのではなく、習慣をいじるような話で。例えば、朝まで電車が動いていないからこそ、深夜の雇用は一方で守られてしまう。だけれども、電車が無いから帰せない、帰すとなると交通費がばかにならない、要は無理やり雇用せざるを得ない。もし電車が1時2時にあるんであれば、その雇用が不要なら帰すことが出来る。これは多分無駄が存在する。
    逆にいえば、そこに雇用の自由な選択が生まれるからこそ、今度必要であれば新しい雇用が創出されるかもしれない。そういうような考え方。東京の一極集中が必ずしもいいとは思わないが、しばらくは東京は頑張らなければいけないだろう、経済効率を良くするために地下鉄なり公共交通機関を今まで動かしてないところを動かしてはどうですか?という提案を前回都議選のときに提案させてもらったりした。」

与謝野「まずですね、グローバル化グローバル化ってみんな言ってたんだけど、グローバル化っていうのは何を意味しているかというと、人も物もお金も自由に動いちゃうっていうことだと私は思っている。その時何が起きちゃうかっていうと、中国の安い賃金水準は自然に日本に入ってきちゃう。物の値段などを通じて。それで、日本の経済をよくするためには、どしたらいいのか?問題なんですよ。
一つは日本は非常に特殊な事情で、こんなに豊かになったんだけど、実は、面積も狭いし、資源もあるわけでもないしというんで、みんな頭使っていろいろやってますよね。なんとか仕事を作ってないと、その社会からおいてきぼりを食っちゃう人が出てくるわけですよ。それはサービス産業でもいいし、製造産業でもいいし、なんでもいい。
やっぱり、どういうものであれ、雇用を生み出す、そのことは、たいそう大事なことで。だけど、お金持ちの人から見るとね、あんな仕事必要ないわよって仕事があるわけですよ。だけど、その人にとっては、自分の命がかかっている。そこのところを、やっぱり、なんというか、僕らが竹中さん達の言う経済学というのを、あまり作用しなかった。最大の原因は、みんなに職業が無いとまずいよと。そこが自民党の原点です。
だけど、不思議に思うのは、民主党の議論を聞いていると、竹中さん的な効率性追求っていうのをものすごくやっているんですよ。
これは市場原理主義的な考え方で、ホントかいな?・・・ですから、おそらく選手が交代するということがあって、占い師になって世の中良くなるか悪くなるか、なんにも変わらないか悪くなる、というふうに私は思ってますよ。なぜかと言うと、100人の政治家が官僚組織の中に入るってわけですよ。そんなことをしたら、大混乱が起きる。民主党が持っている資料というのは、全部財務省で作ってあげた資料ですからね。彼らは、役人が役人がって言いながら、結構上手に利用してるんですよ。ですから、実は民主党でも、どこの党でも私はいいと思っているんですよ。そんな上手い話は起きない。もうひとつは、やっぱり年金で22兆使っちゃうっていう、子供手当に5兆使っちゃう、医療で何兆円使う、30兆超えるお金を使うって言う。そういう考え方があるって言ったら、私は決して否定はしません。それも一つの社会の在り方だ。やるんなら、ちゃんと覚悟決めてやらないと、話が違うってことになっちゃうんじゃないかな。民主党を選ぶか、自民党を選ぶかという選択じゃないんですよね。どういう社会を皆さんが望んでおられるのか。こういう社会ですよ。」

  • 寺谷「いや、民主党は高福祉の社会を目指すとは言ってないように思いますが。むしろ鍋の底に穴があいてるんだということをいいたいんでしょ?」

与謝野「だけど、彼らは一度も、どこに開いているかということを指摘したことはない。ストーリーとして、そういう話をしているだけで、どこですか?穴を開いているのは。というと、天下り、特殊法人・・等。」

  • 寺谷「一時期民主党も、それから自民党もそうだったが、いわゆる公務員バッシングというのが、ちょっと流行ですか?みたいな時期がありましたが。」

与謝野「いやぁ・・・日本の公務員というのは、悪い奴はいるかもしれないけれど、概ね真面目できちんとやっていると思いますよ。」

  • 寺谷「官僚は、政治にとってはパートナーだしツールでもあるし武器でもあったはずなんですけど。」

与謝野「今でもそうですよ。だって、いちいち図書館言って資料調べられないでしょう。」

  • 寺谷「そこには蓄積されたデーターとノウハウがあるんですよね。」

与謝野「ある。」

  • 寺谷「それを使わないでやろうなんてありえないじゃないですか。」

与謝野「ありえない。やぁ・・それね、自民党の中でも役人の悪口言ってれば票になると思った人たちがいるんですよね。だけど、私が知っている役人て言うのは、真面目で一生懸命やっている人多いですからね。」

  • 寺谷「ニュースがワイドショーになって、それがうまく利用されて、国民がその軽薄な正義感に引っ張られてというのが大きいのかなと思う。」

与謝野「軽薄な正義感っていうのはいい言葉ですよ。」

  • 寺谷「国民自ら自分たちを不幸にしているような気がしてしょうがない。」

与謝野「ですから、こういう時っていうのは、なんとか悪い奴を見つけようとするんだけど、苦しくなっているのは少子高齢化、それから日本の産業が中国やなにかに追いつかれそうでそこが本当はすべての苦しいことの根本なんです。なにか、物事の順番を間違えているとか、そういう話じゃなくて、根本的に日本の社会がある苦しさを持っているっていう、そういうふうに考えないと、私はいけないんじゃないかなと思う。」

  • 寺谷「ちょっとびっくりしたのが、この国の外需依存率が15%だと仰ってましたよね。もっとないともたないと思ってましたから。」

与謝野「そんなものなんですよ。ですから日本は、丁度輸入する分ぐらい輸出しているんですよ。今は、輸入している分は相変わらず輸入しているから、貿易赤字になっている。だけど、いろんなところに投資したりしてますから、それの収入が毎年入ってきますから、それでやりくりしている。」

  • 寺谷「この国はもっと外需依存率が高いと思ってました。」

与謝野「私もそう思っていましたよ。」

  • 寺谷「外国で作って外国で売っているケースもありますよね。」

与謝野「それはお金として送られてくるんですよ、配当とか利息とか。それは外需というよりは外国からの仕送りですね。その部分は結構大きい、大きくなってきている。おそらく、正確な数字は知りませんけれど、10兆までは行ってないが、5兆と10兆の間ぐらい仕送りがあるんでしょうね。」

  • 寺谷「国際競争力、あるいは外需に先行しすぎたからこそ内需にひびが入っているという話がよくでますよね。それが、実はそうでもないということですか。」

与謝野「一つ言えることは、円が安かったんですよ。輸出がしやすかった。それから、なんと言ってもアメリカがバブルだったから、楽しく輸出ができたんですよ。それはあるんですよ。だけど、外需依存度というのは経済全体の15%・・」

  • 寺谷「意外と自立してるんだ、この国は。」

与謝野「意外でしょ。だから個人消費が6割、後は会社の設備投資、政府の使うお金、外需、これで500兆。15%って言っても、75兆ありますからね。それが半分無くなっちゃうと大きいですよ。だけど、ドイツなんてのは、45%ですよ。
韓国が参っちゃっている。韓国はただ、ウォンが暴落しましたから輸出は楽になった。ところが聞いてみると、そうじゃないんですって。
大事な部品は、みんなに日本から買っているんだって。そんな楽じゃないと。」

  • 寺谷「もうひとつ、あまり時間がないんで、エネルギーの話をどうしてもしたいと思っていたんですけど、この国は外国へのエネルギーや資源依存率は非常に高いじゃないですか。化石燃料から脱皮して行きましょう、環境のこともありますけれども、これはどういうことかというと、結局はエネルギーやその資源を外国から輸入するのを減らしていくことになるのか。
    それが太陽光など再生可能エネルギーへとひょっとして上手く移行できていくようであれば、この国の外交上大きく景色が変わってくる話かもしれない。仮にこの国が、エネルギーを自給できるようなことになったら、社会福祉だの年金の話など全部解決できちゃうんだろうなみたいな淡い幻想を抱いたことがある。」

与謝野「それは、残念ながら、神様が日本に資源を与えてくれなかった。」

  • 寺谷「例えば太陽光パネルを100km四方くらいに張り巡らしたらどうだろうかとかね。」

与謝野「それはもう、今回相当太陽光をやるんですよね。全部人間が使っているエネルギーというのは、太陽由来なんです。化石燃料も水力も風力も、全部太陽のエネルギーを別な形で変換している。木材もそうだし。だけど、太陽から来るエネルギーというのは、面積に比例しちゃうんです。日本中太陽光パネルで埋めるっていうんならまた別だけど、だけど太陽光パネルの効率も少しずつ上がっているから、だからどこまで行けるか。
だから、そういうものを馬鹿にしちゃいけないです。だけども、計算してどのくらい供給できるか。やっぱり、太陽光パネルでゴルフ場埋め尽くして、100万人行くかどうかだよね。」

  • 寺谷「1%ですか?」

与謝野「100万人行かないですね・・ゴルフ場の隣にある小さな町には全部供給できるという位か。ですから結局は、日本も知らず知らずのうちに原子力をやっているわけですよね。」

  • 寺谷「政府は電源別発電量を原子力は40%まで伸ばすというのを確か打ち出してますね。」

与謝野「ですから非化石燃料、今原子力の取り扱い方なんですけど、こういうように将来行かざるを得ない。どうせ石油だって無くなっちゃうし。」

  • 寺谷「ただ原子力の場合は調整発電がどうしても難しい。」

与謝野「だからベースロード、電気と言うのは昼夜関わらず一定の発電をしているベースロードがあって、昼間向上なんかが動くとピークが上昇する。夜のなると下がる。だから下がってきたときに、ベースロードのものが大きい時はどうするかというと、溜めとくしかないですね。揚水発電とかいろんな方法がある。」

  • 寺谷「だから、原子力が40%まで行くというならなおさら蓄電は開発しなきゃいけないでしょ。」

与謝野「超電導技術が発達してくると、蓄電の技術なんかもでてくる。超電導というのは電気抵抗0ですから、電気作って抵抗なしでぐるぐる回しとけば、熱も出ないし溜まってるという理論があるんですよ。」

  • 寺谷「淡い期待かもしれないけれども、エネルギーの化石燃料からの脱却が上手い方向に進めば、この国の経済を底上げる何かが生まれる気がしてならない。エネルギーの蓄電や超電導、あるいは新エネルギーの開発であるとか。」

与謝野「新エネルギーの開発という場合は、太陽由来のものか、いわゆる原子力由来のもの、この二つしかない。後は太陽光パネルをもっと効率良くする、これは今15%まで行っているかな。たとえばこれが30%になったとなれば、これはもう別の世界。結構有望な世界。今回はそれに相当お金を使っています。
だから、やっぱり日本と言うのは結構苦しい国なんだよね。その苦しいってことを本当に国民に申し上げないで、いい話ばかりしてるっていうのは、やっぱり、いいのかな?って本当に思ってしまうんですよ。」

  • 寺谷「ちゃんと言った方が、僕はいいと思いますよ。」

与謝野「うん・・。」

  • 寺谷「苦しいからこそ知恵を使うんで、その知恵がこの国のインセンティブを生んでいく。」

与謝野「だから、お金を使う話ばかりしてるけど、もともとどうやって稼いでくんのかっていう部分が、やっぱりちょっと足りないんじゃないかな。というのを心配しているんですよ。」

  • 寺谷「ひょっとするとですが、与謝野さんはあと一期、かそれくらいで引退ですかね、年齢的にも。そういうときに聞くのはなんですけれども、やはり10年20年50年先のこの国の、多分僕はエネルギーや資源政策というのがこの国にとって命綱だと思っているから、それに関するロードマップを、民主はおろか自民党もだが、なぜマニフェストとかにどんと載せてこないのかなというのが、非常に物足りなかった。」

与謝野「実は、まったく私は、おなたの考えと一緒なんです。私、政調会長になった時に、三つのことを言ったんです。一つは財政再建しよう。もう一つは、国際競争力を高めよう。もう一つは、実は資源・エネルギー問題。今、資源外交っていう言葉は無くなっちゃった。実は、非常に大事な言葉で、資源、エネルギー外交という言葉をもう一度復活させようと、で、今復活したんです。だから、日本の生命線ですよ。仰る通り。」

  • 寺谷「それが多分、これからこの国の形を作るベースになるんじゃないか。例えばそれがあるからこそ、国際競争力もあるだろうし、国際貢献もあったり、安全保障もそこに起因する。」

与謝野「経済というのは、難しそうなことをいうんだけど、基本は物々交換なんですよ。だから、石油持っている人から石油もらう、こっちは向こうになんか渡す。渡すものを持っていなけりゃいけない。これが、難しい言葉でいえば国際競争力。そこの基本の部分を忘れちゃって、お金をぶんまく話だけやっていると、この世の中そんなことで上手く続かない。僕は、そういう点ではものすごい危機感を持っています。」

  • 寺谷「与謝野さんは若いころ原電のほうにおられましたね。若いころの与謝野さんのことで、エネルギー政策をやりたいと書いてあったのを見た覚えがありまして。」

与謝野「資源・エネルギー問題と言うのは日本にとって最大の問題です。人口が増えてくでしょ、何人まで養えられるかっていう問題が当然あるわけです。これ、何人まで養えるかって時に、これを制限するいろんな要素があって、一つは食糧政策、一つは環境、一つは資源、それからエネルギー。
だから、仰る通り、実は、日本の経済って、明治から何にも変わっていないんですよ。なんとかいいものを作って、海外に売る。そして代わりに必要なものをもらう。この通商国家、貿易国家っていうこの基本概念はおそらく変わらないと思う。ただ、いいやと、江戸時代に戻ろうと、人口3千万位で電気もないと。」

  • 寺谷「国民がそれを選んじゃったらそれはしょうがないですけど・・」

与謝野「蝋燭で生活しようって。それは国民は多分選ばれないと思います。まあ、ですから結構、自民党も全国的に苦戦してるらしいんだけど、まぁいろんな選挙のやり方をみんなやってますけど、私は一番大事なことは何かっていうと、そういう観点からいろんな政策をお話申し上げたいと思うんです。」

  • 寺谷「今回選挙ですから、選挙はしょうがないんでしょうけど、いつも与謝野さんが仰るように、政党を超えて、国全体でウィングを広げて話し合わなければいけないことがこの国には多分いくつもある。そういう観点からみると、今回の選挙で、例えば若いのに優秀で、しかし選挙で負けてしまったとか、あるいはそろそろ引退してもいいんじゃないかという人が残ってしまったりとか、そういうことが起きるかもしれない。それはこの国の損失だと思う。
    僕ははっきり言うと、政界は再編されるべきと思っている。自民も民主も国家のために協力し合ってほしい。言っていることは大同小異というか、似ているじゃないですか。ねじれたときはチャンスだと思ったんです。政治が無駄な時間を費やしている場合ではない。」

与謝野「こういう状況だと、大事なことが決まらない。この不幸は大変です。こんなもんでいいかね?」

  • 寺谷「ありがとうございました。」

※寺谷公一による与謝野馨氏インタビューは8月10日、13時より四谷2丁目の与謝野馨後援会事務所にて行われた。約束は一応30~40分程度ということであったが、実際のインタビュー時間は約45分。インタビューの全文を掲載した。


 

長く政治不信、官僚不信、細かい事件が立て続いてニュースという名のワイドショーが軽薄な正義を振りかざす。つもりにつもった国民からの政治・政府への不信感。だが、よく考えてみる。たしかにそういう不祥事はあったかもしれない。だが、それで全部が悪か?といわれれば、もちろんその答えはない。そうした状況を生み出した政権政党の自民党の責任は重い。その『風』がいまここに吹いている風である。その『風』の由来はもちろん不明瞭なままである。

自民党と民主党、与謝野さんは民主党が高福祉高負担の国家を目指しているというが、自分はそうではないと思っている。あくまで、これは、いうなれば信用の問題。自民党は財務省の資料は正しいと言い、一方で民主党は財務省が出してくる資料はウソだという。この話の事実は、そもそも国民には見えない。財務省の資料が正しければ、民主党はいたずらに官僚不信をあおっているといえる。しかし、財務省の資料がウソだというのなら、与謝野さんまでもが騙されているということになるし、民主党は満額といわないまでも福祉政策向上のための財源を得ることができるということになる。これだって、国民から見れば答えは決して得られない。要は信用するのかしないのか。こんなことで、大事な政権選択をしなければならない・・まさにギャンブル。そんな選挙をしなければいけない状況を思うと、これは国民にとって非常に不幸な選挙だと言える。

だが、ここまで選挙取材をしてきた中で、自分なりに見えなかったものが見えては来ている。要は、民主党の描くバラ色の福祉政策は、なるほどできたらいいなと思うものがならぶ。だが、やはりどうしても財源が心もとない。おそらくいくつかは着地不能なものであるということ、そしてそのあおりで自民党までもが票欲しさに揺らいで大衆に迎合していることで分かりにくくしてしまっているのだということがどうやら正しい。「やっぱり日本と言うのは結構苦しい国なんだよね。その苦しいってことを本当に国民に申し上げないで、いい話ばかりしてるっていうのは、やっぱり、いいのかな?って本当に思ってしまうんですよ。」という与謝野さんの誠実な言葉に、この国の未来を思うとそこに重さと真実を見た気がする。この選挙で、これは東京1区だけの話ではない。自民党だから民主党だからということではなく、人として、決して失われてはならない人材を失う選挙になっては欲しくないと思っている。

今回の第45回衆議院議員選挙立候補予定者インタビュー、与謝野馨氏は前回選挙の勝者であるだけでなく現職の財務大臣、いわば国家の財布を預かっているまさにその人。しかも現政府における最重要人物、さすがにこんな自分も若干緊張しました。なにを入り口にしようか悩んでみたり、だが会えばその物腰の柔らかさと真摯な受け答えにこちらが助けられた。ああ、この方が総理だったらなぁ・・正直そういう気持ちにさせられる。国民に、決していいことばかりじゃなくてもちゃんと知らせなくちゃいけないこと、未来に対する警鐘、与謝野氏のメッセージが今回のインタビューの中でいくらかでも伝えられたらと思う。実は、もう少し話したかった話題もあった。一つは、自転車政策、地方の自治体がやるべき政策に見えてもっと国が中心で進めるべき政策の一つである。環境、エネルギー、健康、そういった側面からの話題、そしてもうひとつは、民主党・海江田万里氏の時にも触れた記者クラブ制度の改革について。インタビューを終え、帰り際にそのことに触れ、また時間があるときにお願いしますと伝えた。

インタビュアーとしての未熟さをまだまだ痛感しながら、しかしなるべく彼が話されたままの言質を文字にする作業をしながら、ふと思ったのは、ああ、この人にはそう長い時間はない、それでも未来を語っている、その姿に心を打たれながら、つくづく日本が決して失ってはならない人材をこの選挙で失ってはならないと感じた。

◇第45回衆議院議員選挙・東京都第1区特集記事(時系列順)


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